東京大、広野に「がん研究拠点」 コロナなど感染症治療薬開発


東京大は広野町に拠点を置き、放射線を使ってがんや新型コロナウイルスなどの感染症の治療薬開発に向けた研究に取り組む。拠点の整備を担う町は旧広野幼稚園の建物を軸に検討しており、早ければ本年度中に町内での活動が始まる。東大から教員や研究員、機器を扱う要員として数人が常駐する見込みだ。町と東大アイソトープ総合センターが25日、医薬品開発についての連携・協力協定を結んだ。同センターは放射線のうちアルファ線を出す核種を活用し、医薬品の開発に必要な基礎研究を独自に進めている。東大の和田洋一郎教授によると、医薬品の効果や副作用を調べるために動物や細胞を使う実験と、体内に取り込まれた医薬品がどのような働きをするかを計算機で想定する実験があり、環境が整い次第、町内で研究に着手するという。整備費は主に町が負担する。東京都内の同センターで行われた締結式で、遠藤智町長と鍵裕之センター長が協定書を取り交わした。鍵氏は「放射線が脅威だった原発事故の被災地で、放射線を生かして病気を治す研究が進むことにより、地域が明るくなってほしい」と拠点開設の意義を語った。遠藤町長は「福島の復興を飛躍させるための潜在力の一つになれば」と期待した。同センターは東京電力福島第1原発事故を受け、浜通りの復興支援に力を入れている。これまで除染や汚染土壌の調査、放射線が健康に及ぼす影響の知見を提供するなどして、町と協力してきた。今後は人材育成での連携も視野に入れる。

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