動物用の人工呼吸器60台以上提供可能 日本獣医生命科学大講師らが調査


新型コロナウイルス感染症で重症患者の治療に不可欠な人工呼吸器の需給逼迫が懸念される中、全国の動物医療機関が保有する動物用人工呼吸器のうち60台以上が転用・貸与可能であることが、日本獣医生命科学大(東京都武蔵野市)の田中亜紀講師の調査で分かった。人工呼吸器はメーカーも生産を増強しているが医療現場への提供には一定の時間がかかり、動物用は逼迫時の有力な調達先と期待されている。(加藤達也、写真も)すでに東京都と北海道の新型コロナ対策部署とも連携し、感染拡大の第2波に備えて態勢づくりを進めている。調査は、災害獣医学が専門の田中講師が、日本臨床獣医学フォーラム(JBVP、林宝謙治幹事)と協力し、獣医学部を持つ16大学と全国の開業獣医師らが加盟する日本動物病院協会(JAHA)を対象に実施した。その結果、日本獣医生命科学大が20台、北海道大が10台、JBVPが20台、JAHAから10台以上-の計60台以上を確保できる見通しが得られた。人工呼吸器は、新型コロナ重症者の増加数が回復者数を上回る状況が続けば「絶対数不足が深刻化する懸念がある」(田中氏)。今回のパンデミックを受け、米国では獣医科大や動物病院が動物用の人工呼吸器を人の医療現場に提供する一方、ウイルス研究経験のある獣医師が新型コロナの特性や疫学上の分析に従事するなど医学と獣医学の連携が強化されている。動物用人工呼吸器を人の医療現場に転用することは日本の制度上も問題なく、田中氏はすでに東京都と北海道の対策本部に対応能力を伝えて協力を申し入れ、即応態勢を整えている。動物診療で獣医師らが使う医療資源はエックス線撮影や呼吸・循環器系の高度機材のほかガウンやマスクなどの衛生用品に至るまで基本的に人の治療と共通。獣医師の団体からガウンなどの提供も始まっている。田中氏は「公衆衛生の確保に貢献することが義務付けられている獣医師や動物医療機関も緊急事態には人命の安全と社会の安定に貢献すべきで、今後も協力態勢を充実させていく」と話している。

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