医師会がPCR検査所 新宿など都内20カ所に設置へ


東京都医師会などは新宿区など都内約20カ所に新型コロナウイルスを検出するPCR検査所を設置する方針だ。保健所の相談センターが77カ所の検査拠点につなぐ今の仕組みでは電話が殺到し、速やかな検査に至っていない。このため、かかりつけ医が必要と判断すれば地域の医師が運営する検査所で対応する仕組みをつくる。全国に広がる可能性があるモデルだが、海外に比べて少ない検査が大きく増えるかどうかは不透明だ。現在、感染が疑われる患者がPCR検査を受けるには、まず保健所が運営する「帰国者・接触者相談センター」に電話する必要がある。検査が必要と見込まれれば、PCR検査を担う「帰国者・接触者外来」を紹介してもらう。東京都内の接触者外来は77カ所ある。ただ都内ではセンターに電話が殺到して検査の前さばきすら不十分な状況が続いている。保健所は「クラスター」と呼ばれる小規模な感染者集団の広がりを抑え込む対策などに多くの人手が取られており、検査体制の改善に乗り出す。医師会が自治体と連携して新たに設置する検査所は保健所を介さない。患者はかかりつけ医に電話などで相談し、その医師が検査が必要と判断すれば、検査を受けられるようにする。東京都新宿区は15日、新宿区医師会や地域の医療機関と連携し、国立国際医療研究センターの敷地内に共同検査所を設置すると発表した。来週をメドに1日最大200人を検査する体制を整える。医師や技師は医師会や各病院から派遣する。検査所で陽性患者を振り分け、症状が重い人は大規模・中規模病院に、軽症者は自宅・宿泊施設で療養してもらう。感染した患者の診療を区内の医療機関が症状に応じて分担する体制にする。吉住健一区長は「医療崩壊を食い止め、地域医療体制の強化につなげていく」と話した。こうした共同検査所の設置は日本医師会も呼びかけており、東京都内では各地区の医師会と自治体が連携することで、まずは23区内に6カ所、多摩地区に2カ所を設置し、その後、20カ所程度に広げる方針だ。検査所は夜間や休日に比較的症状の軽い病気やけがの患者を受け入れる地域の休日・夜間センターに併設するケースなどが想定されるが、地域の実情によって設置場所などは変わりそうだ。東京では感染の拡大で検査の需要が高まっている一方で、スムーズに検査に至らない問題点が指摘されている。PCR検査は3月に保険適用され、かかりつけ医が検査が必要だと判断すれば、保健所を介さずに、接触者外来に患者を紹介する仕組みはあった。ただ接触者外来も人手や高機能マスクなど防護具の不足で患者から検体を採取する負担が増している。検査に関係する業務を地域の医師会が担うことで検査能力も高めることができる。検査は民間の検査機関に委託する方向だ。採取した検体を検査会社まで運ばなくても済むように検査所に検査機器を配置する方向で調整する。必要な検査を速やかに実施するとともに保健所などの負担を軽減する。日本医師会によると、神奈川県や福岡県でも同様の検討が進んでいるという。ただ医師会による今回の取り組みでも検査体制はなお不十分な懸念がある。東京都医師会などは都内の共同検査所を最終的に地域の医師会単位で47カ所に広げることを目指すが、海外に比べて少ない日本の検査を大きく増やすには、新たな工夫も必要になりそうだ。

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