「これから激戦、その後は持久戦」 京大・山中教授、サイト開設 検査強化など提言


ノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥・京都大教授が、新型コロナウイルスに関するサイトを開設して情報発信を続けている。サイトではウイルスとの闘いを「マラソンと同じで、飛ばし過ぎると途中で失速し、ゆっくり過ぎると勝負にならない」と表現し、流行の収束のために検査体制の強化など五つの提言を掲げる。山中教授は取材に「私たちは普段、社会に守られている。今は、私たちが社会を守る番」と正しい知識に基づく行動の大切さを訴えた。サイトは「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」(https://www.covid19-yamanaka.com/)。山中教授は幹細胞の研究者で感染症や公衆衛生の専門ではないが、3月下旬から1日2回のペースで更新している。山中教授によると、情報発信をしようと決めたのは同月中旬。知人が宿泊を伴う100人以上の会合を計画していることを知り、何度もやめるように説得したがかなわなかった。自粛ムードが緩み始めていると実感し、「このままでは大変なことになる。医学研究者として何かできることはないか」と考えるようになったという。サイトでは、感染しても症状が出ない人も多いとされる新型コロナウイルスを「普段は鳴りを潜めて多くの人に感染し、ところどころで牙をむく、非常に狡猾(こうかつ)」と指摘。大切な人、社会を守る行動を自らとる▽感染者受け入れ体制を整備し医療従事者を守る▽検査体制の強化▽国民への長期戦への協力要請と適切な補償▽ワクチンと治療薬の開発への集中投資――の五つを提言する。具体策として、感染病床を増やしたり、人工呼吸器や防護服を増産したりして、医師、看護師を過重労働と感染から守ることを挙げる。その上で、検査数が少ないPCR検査の体制改善を求めている。山中教授は「感染者や濃厚接触者の急増で、PCR検査の必要性が急増することが予想される。必要な人に速やかに、安全に検査を実施できる体制の強化が必要」と訴える。山中教授は取材に対し、ウイルスへの対応が求められる期間を「自分なりのウイルスの理解から、1年くらいになっても想定の範囲内」と強調。その上で「飲食業や芸術家らへの迅速な補償や、従業員の雇用保障が極めて大切。有効なワクチンや治療が開発されるまでは、ある程度の努力と我慢が必要」と指摘する。安倍晋三首相は7日に緊急事態宣言を発令し、東京や大阪など7都府県に法的根拠を持った外出自粛要請が出された。山中教授は「新型コロナウイルスは難敵で、これからしばらくは激戦、その後は持久戦。国民全員が言われて行動するのではなく、自ら進んで正しい行動をすることが求められている。一致団結してこの難局を乗り越えましょう」と呼び掛けている。【島田信幸】

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