新型コロナウイルスの感染の有無を簡易診断できる「抗原検査」の検査キットについて、政府が13日に薬事承認する方針を固めたことが9日、分かった。承認と同時に保険適用とする。現行のPCR検査が数時間かかるのに対し、抗原検査は15分程度で判定可能なため、検査態勢の拡充が期待される。精度がやや劣るため、陰性の確定診断にはPCRも併用する見込み。開発元の「富士レビオ」(東京)が4月に申請していた。当面、週20万件分が供給可能で、同社は需要状況に応じて生産規模の拡大を検討するとしている。抗原検査はインフルエンザの診断でも広く使われる。ウイルス特有のタンパク質(抗原)にくっつく物質を使い、患者の検体に含まれるウイルスを見つける。医療機関で鼻の奥の粘液を採取し、その場でキットに垂らすだけで調べられる。PCRでは検査機器のある地方衛生研究所などに送って調べるため、患者が結果を知るのに1週間かかるケースもあるという。抗原検査の課題は、ウイルス量の少ない患者だと陰性となる可能性があることだ。加藤勝信厚生労働相は8日の衆院厚労委員会で「見落としもあるのでPCRで補っていく。一番いい組み合わせで活用を考えていく」と説明。その上で、救急搬送された患者を受け入れる際や手術前など、早急な判断が必要な医療現場では活用の価値があるとの考えを示していた。抗原検査をめぐっては、安倍晋三首相がPCR検査の前段階として活用し、検査態勢の強化を図ることに意欲を示していた。また、日本医師会も「抗原の迅速診断に対する期待は非常に高い。臨床現場で利用できるようになれば、(検査の)状況はだいぶ変わる」(釜萢(かまやち)敏常任理事)として積極導入を求めていた。