東京都立小児総合医療センター(府中市)で、3月下旬に新型コロナウイルス感染症と確認された1歳男児(当時)が、その後、全身の血管に炎症が起きる「川崎病」と診断されていたことがわかった。新型コロナ感染後では国内初の症例とみられ、専門家は今後の動向を注視している。センターによると、川崎病と診断されたのは1歳11カ月(当時)の男児。母親が新型コロナに感染し、男児も発熱。PCR検査で陽性となり、3月下旬に入院し、約1カ月後に母親と一緒に退院した。男児は約3週間後に再び発熱。発疹などの症状から川崎病と診断された。欧米では、コロナ感染者で川崎病に似た症状が重症化する例が報告されている。年齢層が10代後半までと広く、典型的な川崎病と区別してMIS―C(小児多臓器炎症性症候群)などと呼ばれている。このため改めて鼻の奥から検体を取りPCR検査をしたところ陰性で、感染歴がわかる抗体検査では陽性だったという。同センターで3~5月に川崎病と診断された14人のうち抗体検査で陽性だったのはこの男児だけだった。男児は血液製剤や炎症を抑えるステロイドなどを使った治療で回復し、退院。現段階では後遺症もみられないという。症例は近く、日本小児科学会の英文学会誌で発表される。川崎病の引き金はウイルス感染とする説もあり、小児循環器が専門の三浦大・同センター副院長は、新型コロナと川崎病との因果関係は不明としたうえで、「今回の症例は、新型コロナ感染が引き金になったと推測できる」と話す。乳幼児がいる保護者には「コロナから回復後も、2カ月は、目の充血、手足が赤く腫れるなどの症状が出ないか注意してほしい」と呼びかける。日本川崎病学会副会長の鮎沢衛・日大准教授は、「新型コロナの10歳未満の感染者が約1700人ほど出ているなかでの『川崎病第1例』で、今後も同じような事例が出るかどうか、注意深くみる必要がある」と話している。(野口憲太、熊井洋美)