18歳未満で家族の介護や世話担う子どもたち ヤングケアラーの実態は?


学校や仕事に通いながら、祖父母や親、幼いきょうだいの介護や世話をしなければならない18歳未満の子どもたちがいます。「ヤングケアラー」と呼ばれ、高齢化の進行や貧困、ひとり親家庭の増加などが深く関係しているといいます。学業や進路への影響が懸念されますが、その人数や実態は明らかになっていません。家庭内のことで表面化しにくく、孤立しがちなためです。(中島摩子)■大人が担う責任引き受け支援の必要性を2013年から訴えてきたのが、介護者の調査研究などを行う一般社団法人「日本ケアラー連盟」(東京)です。同連盟によると、ヤングケアラーの定義は「大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどをしている18歳未満の子ども」。連盟は、10の事例を示しています。障害や病気のある家族の身の回りの世話をしている▽家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている▽アルコール・薬物・ギャンブルなどの問題のある家族に対応している-などです。■高校生20人に1人実態を知る手掛かりの一つが、国の就業構造基本調査です。17年の調査では、家族の介護を担う15~29歳は21万100人。5年前の前回調査から3万2500人増えました。ただ、同調査は10代と20代が混在している上、15歳未満が含まれず、実態を示すには十分ではない、という専門家の意見もあります。全国規模の公的データは現時点ではないものの、地域別の研究はこれまでも行われてきました。その一つが16年、大阪府内の公立高校10校の生徒約5200人が答えた調査です。大阪歯科大の濱島淑恵(はましまよしえ)准教授(50)と関西学院大の宮川雅充(みやかわまさみつ)教授(45)の共同研究で、約20人に1人がヤングケアラーに該当しました。ケアの対象は祖母が最多。状態としては、加齢による身体機能の低下や、認知症などが目立ちました。学校へ行く日は4時間以上、行かない日は8時間以上も面倒を見ている、という生徒もいたそうです。ケアをしていることを家族以外に話した生徒は半数以下でした。■埼玉県で全国初の支援条例海外では、英国が1980年代後半から支援に取り組んでいますが、日本では実態が分からないまま、支援が遅れています。そんな中、埼玉県では今年3月末、全国初の「ケアラー支援条例」が施行されました。条例には「ヤングケアラーとしての時期が特に社会において自立的に生きる基礎を培い、人間として基本的な資質を養う重要な時期であることに鑑み、適切な教育の機会を確保し、心身の健やかな成長、発達、自立が図られるように行わなければならない」とあります。教育現場で、相談に応じ、適切な支援機関につなぐよう求めています。厚生労働省も、早ければ12月、初の実態調査に乗り出します。日本ケアラー連盟の示す定義や10の事例を参考に、全国の教育現場を対象に行う予定です。各教育委員会に調査票を送り、来年3月ごろには調査結果をまとめるそうです。◇    ◇【教えて!先生】学校通じてキャッチを 立命館大学教授・斎藤真緒さん7年前、認知症の祖母の介護を高校時代から5年間続けた大学生に出会った。彼女は「おばあちゃんが死んでくれたので大学に進むことができた」と話す一方、そう思う自分への自己嫌悪にもさいなまれていた。介護を担っている子どもや若者たちは、学業がままならず、進学や就職をどうするか-といった人生設計もしにくい。介護の慢性化・長期化は、人生を変えてしまう恐れがある。貧困などの社会問題とも密接に関わっている。家庭の経済状況が厳しく、親は稼ぐことに必死で、祖父母の介護は子どもの手を借りる、ということがある。ひとり親家庭で、疾患を抱えた母親をケアする子どももいる。ただ、それらの実態は外から見えにくい。第一に、本人がヤングケアラーだと自覚しないまま、日常の延長で介護を担っている。ほかの選択肢がない上、周囲からは「若くて体力がある」「家族思い」などと見なされる。自分の置かれた状況を客観視できないまま、閉ざされた家族の中で埋没し、SOSを出しにくい。ヤングケアラーを可視化し、支援につなげないといけない。鍵の一つが学校だ。遅刻や欠席が多い、提出物が遅いなど、ケアの影響が学校生活に表れてくる。学校を通じてキャッチできるようにしたい。今は、18歳未満のヤングケアラーが注目されているが、私は18歳から30代ぐらいで、就職や結婚への影響が懸念される「若者ケアラー」も支援が欠かせないと考える。年齢で区切るのではなく、地続きで長期的な支援が欠かせない。

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