AIが最適な投薬量を判断 岡山大などグループ システム開発


腎機能の低下により、赤血球をつくり出す能力も下がって貧血になる「腎性貧血」の透析患者への治療で、人工知能(AI)が最適な投薬量を医師に示す「投薬支援システム」を、岡山大などの研究グループが開発した。重井医学研究所付属病院(岡山市)の6080回の投薬データを活用しており、現在の正しい判断の割合は92%。実証試験を繰り返して国の承認を得た後、医療現場に導入する。 腎性貧血は、腎臓の働きが低下すると、赤血球づくりを促すホルモン「エリスロポエチン」の分泌が減り、目まいや息切れなどを引き起こす。治療では「赤血球造血刺激因子製剤(ESA製剤)」を継続的に投与するが、その量は患者の血液データから医師が決めている。 システムを開発したのは、岡山大大学院の大原利章助教(病理学)らのグループ。県内最大規模の人工透析施設がある同病院のベテラン医師が透析患者130人に行った6080回の投与例をAIに読み込ませた。 投与例には患者の血中のヘモグロビン濃度や鉄飽和率など4種類のデータが盛り込まれており、前回の投薬治療よりもESA製剤の処方を「増やす」「維持」「減らす」よう医師に“アドバイス”する仕組みという。 システムの精度検証に向け、別の患者81人分のデータを入力。AIの判断を専門医らが検証した。 日本透析医学会(東京)によると、2019年の透析患者は約34万4千人。生活習慣の変化などのため、04年から約9万6千人も増加している。 大原助教は「専門医が少ない地域もあり、“名医”の知見を取り込んだシステムは、適切な医療の提供や経験の浅い医師のサポートにつながる。糖尿病患者に行うインスリンの投与量判断への応用も目指す」としている。 研究成果は2月、海外の医学誌に掲載された。

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