福島医大は三日、三浦里織助教(臨床検査学)と北爪しのぶ教授(生化学)らの研究チームが、血液細胞の中で血小板のみに存在するタンパク質があり、そのタンパク質が血小板が働く際に血液中に放出される物質「血小板活性化マーカー」だと突き止めたと発表した。タンパク質の濃度を測定すれば、血液の固まり具合を見極める際に役立つ可能性があり、動脈硬化症患者らへのより効果的な抗血小板治療の向上につながると期待される。同大によると、血液細胞の中で血小板のみに存在すると明らかになったのは「アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)770」。細胞の表面や内部を調べて判明した。冠動脈疾患の患者二百七十八人の協力を得て、APP770が血小板活性化マーカーかどうかを確認した。抗血小板薬を投与された患者は、投与されていない患者より血液中のAPP770の濃度が低かった。投薬によって血小板の働きが弱まり、APP770の放出も少なくなったとみている。血小板は出血した際に血液を固め、止血する役割がある。ただ、過剰に働くと血の塊の「血栓」ができ、動脈硬化や心筋梗塞などを引き起こす可能性がある。血栓ができるのを防ぐために抗血小板薬を使った治療が広く行われているが、長期的な薬の服用は重篤な出血の危険性を伴う。投薬効果は患者によって異なるため一人一人に合った計画を立てるのが望ましいが、効果を的確に把握する方法は確立されていないという。三浦助教は「安全性が高く、より患者に合った治療の確立につなげたい」と話している。研究をまとめた論文は米科学誌「ジャーナル・オブ・バイオケミストリー」に掲載された。研究チームには福島医大医学部循環器内科学講座、脳神経外科学講座などの教員も参加した。