がん発見遅れ危惧 内視鏡検査コロナで減少、前年の7割に


新型コロナウイルス禍によって医療機関での内視鏡検査数が減り、がんの発見の遅れなどが増加する可能性が指摘されている。関係学会は3月下旬、感染防止の観点から検査などの延期を提言。これを受けて医療機関では検査を制限する動きが出て、患者側も感染を恐れて「受診控え」が起きた。だが現在は同学会も、防護策を取った上での検査再開を認めている。専門医は「このままでは数年後、致命的な状態のがん患者が増えてしまう」と警鐘を鳴らし、早めの検査を呼び掛ける。(井川朋宏)内視鏡検査には主に、口や鼻から通す胃カメラと、尻から入れる大腸カメラがある。人間ドックやがん検診の選択項目に入っているほか、ピロリ菌感染者らの定期検査でも活用されている。体の内部を直接見られるため、がんの早期発見がしやすいという利点がある。新型コロナの感染拡大を受け、日本消化器内視鏡学会(東京)は3月下旬、対応方針を示した。胃カメラを口や鼻から挿入する際、患者がせき込むことで、飛沫(ひまつ)やエーロゾル(微粒子)を通じた医療従事者への感染リスクを指摘。緊急性のない検査や治療は延期も検討するよう提言した。神戸大病院では4~5月の検査件数が前年同期比で、胃カメラ、大腸カメラともに約3割減少。神戸市内の別の病院でも、検査数が例年の半分以下まで減った。日本医師会(東京)の調査でも、全国で検査の制限やキャンセルがあった。一方で、検査控えによる悪影響を懸念する声も出ている。県保険医協会(神戸市中央区)による医療機関向けのアンケートによると、内視鏡検査関連でがんの発見が遅れたほか、吐血や入院まで症状が悪化した例もあったという。5月下旬の政府の緊急事態宣言解除に伴い、同学会は「内視鏡診療を介した感染は世界的にも報告されていない」とし、防護策を取った上での通常診療の再開を認めた。こうした流れを受け、県内の医療機関でも、感染防止対策をした上で検査を続けている。内視鏡検査を行う田中内科クリニック(神戸市中央区)では、事前に患者の体温や症状などをチェック。検査時にはゴーグル、ガウン、マスクなど防護具を身に着けて対応する。田中心和(しんわ)院長(42)=神戸大非常勤講師=は「一度検査を逃すと、その後も受けなくなる患者がいる。がんの発見が遅れて進行してしまうので、流行の第2波が来る前に、今のうちに検査を受けてほしい」と訴える。

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