愛媛県内医療機関、経営が厳しく 受診控えやコロナ対応の負担


新型コロナウイルス感染症が愛媛県内の医療機関の経営を圧迫している。患者の受診控えや感染者の受け入れ態勢整備に伴う負担が要因で、関係者からは感染第2波への備えや地域医療の維持を憂慮する声も上がる。「5月の受診は前年比で約3割減った」。松山市の耳鼻咽喉科医院の医師は3月以降の患者の大幅減に戸惑う。減収が進んだ4月の診療報酬が入る6月は、従業員へのボーナス支給も重なり「資金繰りが厳しい」。感染リスクの中で働く従業員に報いたいが、秋冬も見据え、先を見通せない状況に頭を悩ませる。県医師会の村上博会長は「感染リスクや待ち時間の3密状態を懸念し、強い受診控えが起きている」と説明。全国的な傾向では耳鼻科や小児科、整形外科で特に減少が大きく、2~4割減収とのデータもあるという。徐々に回復は見られるが「当面は不安定と見込まれ、長期化すれば廃業というケースも出るだろう」と懸念。「医療機関は感染防止対策に努めている。受診が必要な人まで控えないように」と呼び掛ける。松山小児科会の平井伸幸会長は、患者減少は臨時休校に伴う子どもの感染症減少が一因とみる。経営するクリニックでも5月の患者数は前年の半分程度。予防意識の浸透で「感染症は以前ほどの患者数にはならないのでは」とも考える。打撃は感染者の治療現場にも。県公営企業管理局県立病院課によると、県立4病院の5月の外来患者は前年比で計25%減。4月分の収入は前年比で約1割、3億円弱も減った。感染者を受け入れる病院では入院や手術件数の抑制、診療所の受診控えに伴う紹介患者減少などが影響したとする。重症患者に対応する愛媛大医学部附属病院も集中治療室を空け、感染症治療に人手を割くため、3月下旬から収入の多くを占める手術の件数を2~3割減らした。徐々に運用を戻すが、三浦裕正院長は「すぐ元通りとはいかない。覚悟の上で態勢を整えたが、かなりの減収」と語る。難しいのは今後の感染の行方が見通せない点だ。中予のある重点医療機関は、軽症・中等症者の病床を5月に用意。受け入れ可能なのは30人ほどだが、実際には50床の病棟を丸ごと空ける必要がある。50床分で1日150万~200万円の収入が消える計算で「非常に厳しい状況」だ。県内の医師・歯科医師でつくる県保険医協会(藤田敏博会長、約560人)が4~5月に実施した調査では、回答した7割以上の病院や診療所で患者が減少。長期化に伴う経営の不安や、人材不足の中で一層求人が難しくなった状況への嘆きも聞かれたという。

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