iPS細胞でパーキンソン病改善 京都大学、患者の脳に移植治験


京都大学医学部付属病院は、パーキンソン病患者にヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した神経細胞を7人の脳に移植した臨床試験(治験)で、ドーパミン分泌などの有効性と安全性を確認できた、と発表した。実用化に大きく迫る成果で、保険診療に向け、医療現場で使う医薬品としての製造販売承認の申請を本年度内に行う方針。患者自身ではなく健康な人の細胞から作製したiPS細胞によるパーキンソン病治療の治験は世界初で、17日、英科学誌ネイチャーに掲載される。パーキンソン病は、脳内の神経伝達物質ドーパミンを出す神経細胞が徐々に減少し、手足の震えやこわばり、運動機能の低下が生じる進行性の指定難病で、国内に約25万8千人(厚生労働省の2023年推計)の患者がいるとされる。現状はドーパミンを補う薬物などによる対症療法が中心だが、服薬が長期間におよぶと効きにくくなる問題がある。治験は18年から21年にかけ、50~69歳の男女7人の患者に対し、頭蓋骨の左右に穴を開け、ドーパミンを供給するiPS細胞由来の神経細胞計500~千個を移植する手術を実施。安全性のみの評価対象とした1例目を除く6人全員で、移植した細胞がドーパミンを分泌しているのを脳画像で確認した。運動機能の改善は4~5人の患者で確認でき、若くて重症度が低いほど症状の改善の効果が見込めることも分かったという。安全性については術後2年間の経過観察で、移植した細胞のがん化や異常な増殖、術後1年で免疫抑制剤をやめた後の拒絶反応はみられなかった。治験における経過観察期間を終えた23年以降も、異常は確認されていないという。今後、神経細胞の製造を担当した住友ファーマが、厚生労働省への製造販売承認を本年度内に申請する予定。同じくiPS細胞由来の医療用製品では4月8日、大阪大学発のスタートアップが心臓の筋肉の細胞シートを移植する治療法で、国内初の申請を行っている。

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