【脳を知る】うつ症状 認知症の症状の可能性も


「今までしていた家事をしなくなってきて、なにをするのも億劫(おっくう)になってきたのです」70代の女性が夫に連れられて、もの忘れ外来に来られました。少し前からそのようなうつと思われるような症状があり、家事はほとんど夫がするようになり、買い物も夫が一緒に行き、必要なものを買ってくるとのことでした。また、最近のことを忘れてしまうなど、もの忘れの症状もあるため、もの忘れ外来に来られました。少し前に近くの精神科にもかかっていて、うつの症状もあるとのことで、抗うつ薬が処方されていました。もの忘れの検査をすると、見当識の障害を認め30点満点中20点と低下していましたが、脳MRIではほとんど異常を認めませんでした。さらに脳血流SPECT検査をすると、アルツハイマー型認知症で特に低下する側頭葉や頭頂葉で低下を認め、アルツハイマー型認知症と診断しました。そのため、抗認知症薬の内服を開始したところ、うつの症状は改善し、精神科でもらっていたうつの薬を減らすことができました。しかし、うつの薬を完全にやめてしまうと、うつ症状がまた出てくるため、うつの薬も継続してもらうようにしました。この方は、アルツハイマー型認知症とうつ両方が合併していたと考えられ、認知症の薬とうつの薬を飲むことで、今も元気に私の外来を通院されています。「今まで好きだったことに興味、関心がなくなった」「家にいることが多くなり、外出しなくなった」「なにごとにも意欲がわかなくなった、億劫になってきた」「活気がなくなった」このようなうつと思われるような症状が、うつ病からくるものか、認知症からくるものか、なかなか専門病院でも難しいことがあります。認知症の初期は症状が分かりにくく、この方のように「うつではないか」と思われ、認知症の発見が遅くなる場合があります。

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