全社協が福祉ビジョン2020を発表 地域共生社会に向け「協働する場」へ


全国社会福祉協議会(清家篤会長)は2月21日の政策委員会幹事会で、2030年までに福祉関係者が取り組む方向性を示す「福祉ビジョン2020」を決定した。国が進める地域共生社会の実現に向け、多様な関係者が協働する場を目指すことなどが柱。社協の存在意義も問われる中、企業との連携や、災害時の支援など「福祉」の枠を超えて変革する姿勢を打ち出しているのも特徴だ。全社協がビジョンを見直すのは9年ぶり。ビジョンは目指す姿として「ともに生きる豊かな地域社会」を掲げた。生活上の困難があっても孤立しない社会を目指し、国が掲げる地域共生社会や、国際的な取り組みである「持続可能な開発目標(SDGs)」とも歩調を合わせ、八つの方向性を示している。新ビジョンのポイント(1)地域の多様な関係者をつなぐ「連携・協働の場」に
(2)居宅から施設までニーズに応じた多様な実践
(3)福祉を支える人材の確保・育成・定着
(4)福祉サービスの質と効率性の向上
(5)資金確保も含めた福祉組織の基盤強化
(6)国・自治体とのパートナーシップ強化
(7)地域共生社会への理解を広げ参加を促進
(8)災害福祉支援のネットワーク化と専門人材の養成具体的には、地域課題の解決に向け、社協が医療や教育、司法など福祉分野以外の関係者とも連携し、協働する場となることを目指す。改めて社協本来の役割が、幅広いネットワークでの連絡調整だと強調する内容だ。同時に、自治体とのパートナーシップ強化も挙げた。地域課題の解決に向け、事業の実績を出すためには継続性の担保が不可欠だとし、複数年に渡る委託契約も働き掛ける。全社協や都道府県社協が積極的に現場の課題を集約して政策提言も行うという。組織基盤の強化では、寄付金や共同募金など既存の仕組みだけでなく、ネットを通じたクラウドファンディングや企業との協働など新しい独自財源の確保も模索する。社会福祉法人による一定の経費負担や、社協への人材派遣の仕組みづくりにも取り組むという。ビジョンがこうした方向性を掲げた背景には、組織基盤の弱体化と、社協間での活動内容の格差がある。全国に1800カ所ある市区町村社協の職員は13万人だが、正規職員は3割程度にすぎない。行政から単年度で補助事業や委託事業を受けて運営しているのが一因という。同様に全国に67カ所ある都道府県や指定都市の社協でも正規職員は5割を切っている。このため「社協の存在意義が問われる中、自ら改革する姿勢を示した」(全社協)という。

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