ミャンマーの植物から抗がん成分発見 名古屋市大「創薬に」


名古屋市立大の研究グループは、高知県立牧野植物園と協力し、ミャンマーのキョウチクトウ科植物から抗がん作用のある化合物を抽出したと発表した。同国では軍のクーデターで政情不安が続く。同大薬学研究科の林秀敏教授(生化学)は「今は研究どころではないだろう。将来的にミャンマー政府と協力し、現地の産業育成にもつながれば」と話している。同国は多様な植物の宝庫だが研究が進んでおらず、「植物資源」として期待されている。同植物園は2000年、同国と協定を結んで研究を進めており、名市大は同植物園の「ミャンマー産植物抽出エキスライブラリー」(全700種)を活用した。林教授らは、ヒトの細胞内の小器官「小胞体」で、異常たんぱく質を取り除くストレス反応(UPR)を抑制する働きのある植物を探した。UPRは慢性的に活性化するとがんなどを引き起こすことが知られる。その結果、キョウチクトウ科の一種に注目し、成分を精製して化合物「ペリプロシン」を取り出した。この化合物を試験管内で血液のがん細胞に作用させると、UPRを抑制し、がん細胞が大きく減ったという。林教授は「UPRはがんだけでなく、さまざまな病気に関与しているとされ、アルツハイマーなど神経変性疾患や糖尿病への効果も期待される。今後実験を重ねて安全性を調べ、創薬につなげたい」と意気込む。同植物園は「社会情勢や新型コロナウイルス感染が落ち着き次第、ミャンマー森林研究所と共同で調査したい。資源探索は人類の未来の礎。研究を続けることは使命だ」としている。成果は5月、英科学誌サイエンティフィック・リポーツ(電子版)に掲載された。【川瀬慎一朗】

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