大腸に小腸の機能、ラット実験で成功…慶大チーム


小腸の様々な細胞のもとになる幹細胞を培養して大腸に移植し、大腸に小腸の機能を持たせることに動物実験で成功したと、慶応大の研究チームが発表した。小腸は移植が難しい臓器で、小腸の難病を治療する新しい再生医療の開発に期待がかかる。成果が英科学誌ネイチャーに掲載された。佐藤俊朗・慶応大教授(幹細胞医学)らのチームは、ラットの小腸から幹細胞を採り、培養して小さな細胞の塊にする技術を確立した。実験では、小腸を切除したラットの大腸に、この細胞塊を移植。さらに大腸を十二指腸につなぐと、細胞塊から小腸のような複雑な組織ができ、糖や脂質を吸収することがわかった。塊にした幹細胞が、消化された食べ物の流れを感知することで小腸の組織に変化したと、チームはみている。小腸には無数のひだがあり、食物の消化や、栄養分の吸収などの働きがある。小腸が生まれつき短い人や、重い腸炎などで小腸を切除した人は、栄養を十分に吸収できない「短腸症候群」という重い病気になる。小腸移植しか根治療法がないが、小腸は拒絶反応が強い難点があり、国内では過去25年間で30例ほどしか移植が行われていない。東京医科歯科大の油井(ゆい)史郎准教授(消化器再生学)の話「別の臓器に機能を持たせるのは面白い発想で、非常に有用性が高い。臨床応用に向けて安全性の確立などが求められる」

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