神戸市立神戸アイセンター病院は12日までに、iPS細胞から作製した目の網膜色素上皮細胞を含む液体を移植し、視力低下や視野の欠損を伴う病気を治療する臨床研究で、1例目の手術を実施したと発表した。手術は合併症もなく約1時間で終了、成功した。1年間の経過観察をし、移植した細胞が定着して視力が回復するかどうかを確かめる。研究は、目の網膜色素上皮という組織が傷んで起きる10種類ほどの病気を対象にしている。今回手術を受けたのは関西地方に住む40代の男性で、網膜色素変性症という病気のため、矯正視力が0.01ほどになっていた。今月上旬の術後の経過は良好で、男性は11日に退院した。執刀した栗本康夫院長は「(手術後に)視力低下はない」とした一方、有効性の評価には「数週間から数カ月かかる」との見方を示した。過去に実施した研究では対象を滲出(しんしゅつ)型加齢黄斑変性という病気に絞っていたが、今回は光を感知する機能の維持に関わる網膜色素上皮細胞が失われる点で共通する複数の病気をまとめて対象にした。栗本院長は、これにより「より多くの患者を早く救うことにつながる」と強調した。5年以内に50人の患者に手術する計画。研究には別の病院も参加予定だとした。〔共同〕