がん経験の男性労働者は幸福感が高い 愛知・藤田医大のグループ分析


男性労働者のうち、がん経験者の方が、がん既往歴のない人と比べ幸福感を感じる割合が高いことが、国立がん研究センターや藤田医科大の研究グループの分析でわかった。がんになっても仕事を続けることの大切さを示すもので、治療と仕事の両立を推進するための環境整備が急がれる。【細川貴代】2011~16年に全国の40~65歳の働く男女約5万4000人を対象に、国立がん研究センターが実施した「次世代多目的コホート研究」をもとに、藤田医科大医学部の太田充彦准教授(公衆衛生学)らが分析した。がんになった経験のある労働者と、がんの経験のない労働者について、主観的な不健康▽身体的機能の低下▽抑うつ症状▽幸福感――などを調べて比較した。幸福感では、「ご自分がどれくらい幸せだと感じますか」との質問に対し、「大変幸せ」から「幸せでない」までの4段階から選択。その結果、男性では、がん経験のある労働者は、がん経験のない労働者よりも幸福感を感じる割合が統計学的に有意に高かった。女性では違いは見られなかった。また、男女ともに、がん経験のある労働者は、自分の健康状態を良くないと感じたり、身体的機能の低下を訴える割合が高くなることもわかった。現在は2人に1人が生涯でがんと診断され、3人に1人は就労可能年齢(20~60歳代)で罹患(りかん)している。国は患者の治療と仕事の両立支援策に力を入れているが、治療と仕事の両立にはいまだに課題が多い。太田准教授は「働くがんサバイバーには、健康観や身体的な機能の低下を訴える人が多いこともわかった」と話し、「がんになっても働き続けることを希望する人が増える中、職場や雇用主は『働けているから大丈夫』ととらえるのでなく、復帰後も継続的にがん経験者の療養支援や体調に配慮した職場作りとサポートが求められるだろう」としている。

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