コロナ患者受け入れ 病院同士で病床状況を共有 若手医師がシステム開発


新型コロナウイルス患者が急増する中、福岡県内でコロナ患者を受け入れる病院同士が、空き病床数や入院患者の症状などの情報を共有する独自の取り組みを始めた。地域の病院全体で協力しながら患者に対応していくのが狙いで、コロナ治療の最前線に立つ若手医師がシステムをつくった。共有する情報は①各病院が県に届け出たコロナ対応病床数②このうち今すぐ受け入れられる即応病床数③現時点の入院患者数と各患者の症状――など。福岡赤十字病院(福岡市)の感染症内科、後藤健志医師(28)が、県内の医師仲間やシステムエンジニアの友人らの力も借りながら表計算ソフトを使ってシステムを構築した。表計算シートの1マスを患者1人とし、症状に応じて重度=赤色▽中等症=黄色▽軽症=緑色▽無症状=水色――と色分けした。それぞれの患者の入院日のほか、「ECMO(人工心肺装置)を使用」「介護が必要」「透析が必要」「妊婦」「小児」などの情報も加え、病院ごとの患者一人一人の症状や状態が一目で分かるのが特徴だ。各病院の端末で更新した情報は他の病院や、病床調整を担う県の新型コロナウイルス感染症調整本部の端末にもリアルタイムで反映され、入院患者数だけでなく、看護師らスタッフの負担が大きい患者がどれくらい入院しているかが互いに分かるようになった。福岡県では、感染者の増加を受けて独自の「コロナ警報」が出され、各病院は県に届け出た病床ですぐ患者を受け入れられるよう準備を始めたが、最重症者向けのECMOを使える病院は限られている。後藤医師は「重症化してECMO治療を検討する患者が生じた時、地域内で転院してECMOを使えそうかを判断するなど、互いの病院の状況を把握するのは重要だ」と意義を指摘する。システム開発のきっかけは、緊急事態宣言が出た4~5月に一部の病院に患者の受け入れ依頼が集中するなどして現場で混乱した反省がある。各病院には県の調整本部が依頼するが、同じ10人でも症状が重い10人と軽い10人では病院側の負担は全く違う。「人数だけではない各病院の状況がリアルタイムに分かれば、助け合うことができるのでは」。そう考えた福岡赤十字病院の石丸敏之副院長(62)が若手の後藤医師に指示し、県内の医師仲間の助言も得て完成したシステムは7月に福岡市内と近隣の病院で導入され、現在は県内全体に拡大。他県の医師会からも問い合わせがきているという。県の調整本部のメンバーで、九州医療センター(福岡市)の野田英一郎医師は「(コロナ禍前まで)入院患者の受け入れにどれだけ余力があるか病院同士が明かすことはなかった。冬は肺炎や心筋梗塞(こうそく)、脳卒中などの入院が増える時期で、届け出た病床をすべてコロナ患者に使えるわけではない。地域の病床の逼迫(ひっぱく)状況を見ながら早めに準備ができると良い」と語った。【青木絵美】

関連記事

ページ上部へ戻る