浜松医科大(浜松市東区)細胞分子解剖学講座の華表友暁准教授や外科学第一講座の高梨裕典医師らの共同研究グループが12日までに、神経組織に多く含まれる脂質「スフィンゴミエリン」が肺腺がんの再発を予測する指標になりうることを明らかにした。再発リスクの高い患者を予測し、術後の抗がん剤投与を真に必要とする患者に適切な治療を進めることが期待できる。
肺腺がんは日本人の肺がんで最も発生頻度が高く、他のタイプの肺がんと比べて非喫煙者や女性の割合が高い。共同研究グループによると、肺がんの根治手術後は再発予防として抗がん剤を投与するが、再発を客観的に予測することは難しく、抗がん剤が必要かどうかを判断する指標が求められていた。
同グループは根治手術を実施した再発群10例と非再発群10例を対象に、初回手術時に切除したがん組織に含まれる脂質を比較した。特定した2595種類の脂質量を解析すると、再発群は203種類の脂質が非再発群より2倍以上増加し、なかでもスフィンゴミエリンの一種が顕著に上昇していた。
高梨医師は「病理所見では予測不可能でも、客観性を持って患者に治療提案ができるようになり、患者も選択しやすくなる」と話す。再発リスクの低い患者への抗がん剤治療を止めることで、医療費削減にもつながる可能性を指摘する。
研究成果は、がん全般の研究報告を扱う国際学術誌に掲載された。来年1月に世界肺がん学会で報告する。