重大な副作用などを有する医療用医薬品の情報を分かりやすくまとめた「患者向医薬品ガイド」の改良の方向性が固まり、2026年度以降、新たな同ガイドの提供が始まる見通しになった。同ガイドは、重篤な副作用の早期発見や医薬品の正しい理解などを目的とした公的な医薬品情報だが、患者の認知度の低さや作成する製薬企業の負担など課題も多かった。様々な改良で、広く活用される資材に生まれ変わることができるかが焦点になる。これまで厚生労働科学研究や日本医療研究開発機構(AMED)の研究班が患者向け医薬品情報のあり方を研究し、改良に向けた提言を発出。その提言を基本に、日本製薬団体連合会に設置された作成基準検討委員会で、アカデミアや行政、業界団体の関係者らが1年半かけて話し合い、今年3月に厚生労働省に具体的な改良の要望を提示した。要望を受けて厚労省は、新たな同ガイド作成の手引きや雛形などの整備に取り組む。過去の同ガイドと添付文書を教師データとした人工知能による原案作成の効率化も検討する。約2年で整備を終え、26年度から新たな同ガイドの提供が始まる見込みだ。同ガイドは、副作用など患者へ注意喚起すべき医療用医薬品の適正使用に関する情報を、6ページ程度で分かりやすく記載したもの。重大な副作用などを有する医療用医薬品が対象で、添付文書の情報をもとに要領に準拠して製薬企業が作成し、厚労省が運用する。患者や家族が医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトで閲覧できるほか、医療従事者も患者説明資料として利用できる。06年から運用を開始したが、患者の認知度は低く、あまり活用されていないことが課題だった。AMED研究班の調査で、製薬企業の半数以上が作成を負担と感じており、くすりの適正使用協議会の「くすりのしおり」との一本化を望む声も多かった。こうした背景のもと、日薬連の作成基準検討委員会は今回の要望で、新たな患者向医薬品ガイドのあり方として、▽基本的に全ての医療用医薬品を対象とする▽必須版と詳細版の2部構成とし、必須版はA4で1枚程度のボリュームとする▽中学生程度が理解できる分かりやすい表現を用いる――などを求めた。このほか、スマートフォンやタブレット閲覧への対応、二次加工を想定したデータフォーマットの整備、電子版お薬手帳等からのリンク閲覧などを要望している。インターネットの発展で社会に様々な情報が氾濫する中で、信頼できる公的な医薬品情報は患者にとって有益だ。患者が容易にアクセスでき、正しい情報の要点を理解できる資材として同ガイドを確立させる一方、患者一人ひとりに応じた個別最適化された情報提供を薬剤師らが担うことで、医薬品の適正使用が充実すると期待したい。