がん診断精度向上へ「新兵器」 針で採取した組織2分割 京都で開発


がんの有無や状態を調べるため人体から針生検で採取した細い組織を縦方向に2分割できる医療機器を、京都府立医大などの研究チームが開発した。同じ組織を使って病理検査と遺伝子検査が可能となり、特定の遺伝子変異を標的とした分子標的薬の選択など「個人の病状に応じたがんゲノム医療の精度向上につながる」と期待している。【千葉紀和】がんの診断は一般的に、針で採取した組織を病理専門医が顕微鏡で観察し、がんが見つかると特定のがんに応じた遺伝子変異を調べて効果的な治療法を探る。この時、病理検査は採取した組織をホルマリン液に漬けるのに対し、遺伝子検査はRNAが壊れないよう組織をすぐに凍結する必要があり、従来は同じ組織で双方の検査をすることが困難だった。別の組織だと、がんの有無にばらつきがあり得る。このため、同じ組織を分割して双方の検査が可能になれば、正確な診断や最適な治療法を選択できると、府立医大の浮村理教授(泌尿器科学)が発案し、京都市南区の医療機器メーカー・ウミヒラが開発した。切断機器はプラスチック製でステンレスの刃が付き、手のひらに乗る大きさ。針生検で採取した直径0・8ミリの糸状の組織をろ紙に付着させ、ボタン一つで半分ずつにできる。浮村教授は「病理学的にがんの位置を担保した組織を遺伝子検査でき、特定の遺伝子を標的にした治療を多くの患者に届けることができる画期的な機器だ」と意義を話す。同社と府立医大で国内特許を取得し、米国や欧州、中国でも申請中。日本医療研究開発機構(AMED)の医工連携事業に採択され、開発資金の支援を受けた。販売価格は9000円前後。問い合わせはウミヒラ(075・932・4359)。

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