子宮移植、日本医学会が容認=自発的、無償提供条件―倫理面に課題


子宮がない女性に他人の子宮を移植し、妊娠出産を目指す「子宮移植」について、医学系の学会でつくる日本医学会検討委員会は14日、臨床研究として移植を認める報告書を公表した。慶応大などで研究が進んでおり、実現に向けて大きく進展した形だ。
 対象となるのは、生まれつき子宮がない「ロキタンスキー症候群」の女性ら。同症候群は国内で4500人に1人と推定され、一部から出産を望む切実な声が上がっている。一方で、子宮移植には、生命の維持に必要のない臓器移植が許容されるのかという倫理面の問題が指摘されていた。
 報告書では、子宮提供者らの負担などに懸念を示す一方、移植による妊娠を望む患者がいることから実施を容認。移植は少数に限定し、提供者は母親ら親族を想定した。
 提供者が自発的な無償提供に同意することや子宮の摘出・移植の危険性について十分に説明を受けることなどを条件に挙げた。実施機関は、日本産科婦人科学会と日本移植学会が設置する委員会から研究体制のチェックを受ける。
 子宮移植は臓器移植法の対象外となっているが、脳死者からの移植が可能なら提供者に関わる医学的課題が解消されると指摘。脳死者からの子宮移植を可能とするための法令改正を提言した。
 子宮移植をめぐっては、スウェーデンで2014年、移植を受けた女性が世界初の出産に成功した。国内でも慶応大のチームが18年、臨床研究案を日本産科婦人科学会と日本移植学会に提出。論点が多岐にわたり、両学会の見解が一致しなかったため、日本医学会が19年に検討委を設置し、産科や移植医療、生命倫理の専門家らで議論を重ねてきた。
 国内では慶応大の他、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院(名古屋市)も臨床研究を予定している。 (C)時事通信社

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