幼少期の嗅覚刺激が行動に影響「におい刷り込み」解明 福井大研究グループ


福井大学医学部の西住裕文准教授らの研究グループは4月20日、幼少期の嗅覚刺激が、その後の社会行動に影響を及ぼす「におい刷り込み」の仕組みを解明したと発表した。生後の一定期間に特定のタンパク質の作用で刷り込みが起こることを、マウスによる実験で明らかにした。研究グループは「自閉症など発達障害の治療や原因究明への応用が今後期待できる」としている。「刷り込み」は幼少期に外界から受ける嗅覚や触覚、聴覚などの刺激によって脳内の神経回路が変化し、生涯にわたって影響を及ぼす現象。アヒルの後追い行動やサケの母川回帰に代表される。西住准教授らは、2016年から哺乳類の嗅覚系の刷り込みをマウスで研究している。生後1週間までに脳内のタンパク質「セマフォリン7」「プレキシンC1」が結合し、においに関する神経回路が増強。この時期に鼻をふさいでいたマウスは、本来興味を示すべき仲間のにおいを避け、自閉症と同様の行動を取るようになることを確認した。さらに愛情ホルモンとして知られるタンパク質「オキシトシン」が、この時期に接したにおいを「心地よく、安心感のあるにおい」として認識させることも明らかにした。西住准教授は「この研究をヒトに応用することで、いつどのような感覚刺激を与えると、より心豊かに育まれるのかが分かってくるのではないか。愛着障害、発達障害が発症する原因の究明にもつながる可能性も高い」と説明。オキシトシン投与は自閉症の治療法として研究されており、「投与時期の最適化など、治療の改良にも役立つのではないか」と今後の展開に期待している。研究論文はこのほど、医学系の国際オンライン誌「eLife」に掲載された。

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