福島医大医学部基礎病理学講座の杉本幸太郎講師(37)、小島学博士研究員(37)らの研究チームは、細胞同士を接着させる分子の一種が子宮体がん患者の体内に大量に発生すると、患者の生存率が低下することを突き止めた。分子が、がんの発生や進行に影響を与える物質の働きを活性化させていた。この分子に着目した新しい治療法の確立が期待される。同大が八日、発表した。子宮体がん患者の生存率に影響を及ぼすと判明した分子は「クローディン-6」。研究チームは手術で摘出された、患者計百七十三人分の子宮を調べた。このうち十人に大量の「クローディン-6」が発生していた。この分子が発生しなかったり、少量だったりした他の百六十三人の五年後の生存率が約90%だったのに対し、十人の生存率は約30%だった。この分子が生存率に影響する仕組みを調べた結果、女性ホルモンのエストロゲンを検出するセンサー「エストロゲン受容体」の働きを活性化させていた。エストロゲンやエストロゲン受容体は子宮体がんの発生や進行に影響するとされ、これらに着目した治療法が普及しているが、人によっては効果のない場合があった。「クローディン-6」は胎児以外の人間には一般的に発生しない。子宮体がん患者の一部に大量発生する原因は不明という。生存率に関する論文はスイス科学誌「キャンサーズ」、エストロゲン受容体の活性化に関する論文は米国科学誌「モレキュラー・キャンサー・リサーチ」に掲載された。