世界初「細胞シート」治験 長崎大が4月から 早期十二指腸がん手術に


長崎大は12日、患者自身の細胞を培養した「細胞シート」を、早期の十二指腸がんの手術に使う世界初の治験を4月から始めると発表した。細胞シートを患部に貼って組織再生を促し、手術による合併症を防ぐのが狙い。他の臓器への応用も目指す。細胞シートは、患者の太ももの筋肉細胞を分離、培養して作製する。大きさは直径2.5センチ、厚さ0.1ミリ。医療機器メーカー「テルモ」(東京)と共同開発。製品化を目指している。この細胞シートを使った治験を医師主導で4月から2023年までに計6例行い、安全性を確認する。同大では、口腔(こうくう)粘膜から作製された細胞シートを食道に貼る臨床研究を行った実績がある。腹腔(ふくくう)領域は患部の治療が難しく、細胞シートも開発されていなかった。同大によると、早期十二指腸がんの手術では「ESD」と呼ばれる内視鏡と電気メスを使い、腫瘍をはがす手法などが用いられるが、手術後、薄くなった患部に穴が開く穿孔(せんこう)という合併症が起きやすい。これを防ぐため、この手術と同時に腹腔鏡手術を行い、十二指腸の外側から細胞シートを貼って、穴が開かないよう“補強”する。12日、同大の研究者らが記者会見した。「消化器再生医療学講座」でテルモなどと共同研究を進めている金高賢悟・同大大学院医歯薬学総合研究科教授は「細胞シートはいわば生きたばんそうこう。十二指腸の再生医療を全国、世界に発信し、ほかの膵臓(すいぞう)や肝臓などの臓器に応用したい」と述べた。

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