コロナ感染阻害する抗体 島根大医学部、共同研究で開発


新型コロナウイルスの感染を阻害する能力を持つ抗体の開発に、島根大医学部と長崎大熱帯医学研究所のグループが成功した。抗体治療薬をはじめ、抗原検査キット、マスクなどへの幅広い応用を進める。変異種への効果についても期待が持てるという。共同研究に携わる島根大医学部の浦野健教授(62)=病態生化学=が23日、出雲市塩冶町の同大医学部で発表。22日には抗体の遺伝子配列に関する特許を出願した。新型コロナ感染のメカニズムは、ウイルスが持つ「スパイクタンパク質」が肺の細胞にあるウイルス受容体と結合。細胞内に侵入して、さまざまな症状を引き起こす。開発した抗体は肺の細胞よりも先にスパイクタンパク質と結び付き、ウイルスが侵入できなくする。浦野教授の研究室は昨年4~9月、マウスの体内で14種類の抗体を作製。うち9種類を長崎大が調べた結果、5種類がウイルスと結び付くことを確認した。抗体はミンクから見つかった変異種とも結合。さらに5種類の抗体のうち4種類は、ウイルスとは違うタンパク質とも結び付くため、研究グループでは英国やブラジルで拡大する変異種にも適応する可能性があるとみている。浦野教授は、今後3~5カ月で人間に適応する抗体の開発は可能だと強調。「ウイルスとの強い結合力と多様性を持った優れた抗体ができた。変異種にも対応するかどうかさらに研究を進める」と話している。抗体を使った治療薬の実用化は早くても数年かかるが、短時間で感染が分かる抗原検査キットや、抗体を定着させたマスクの製品化には既に着手しており、半年程度で完成を目指す。

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