身近な診療所でコロナとインフル検査 国に先駆けた奈良県の独自制度


新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時流行に備え、国が体制作りを急いでいる。身近な診療所などを、両方の検査ができる「診療・検査医療機関」として都道府県が指定し、従来の診療の流れを変える仕組みだが、実は奈良県が6月に始めた独自制度「発熱外来認定制度」と同形態。県内の一部診療所では既に両方の検査を実施しており、県も指定医療機関を順次、増やしていく方針だ。【久保聡】当初、新型コロナの検査は「帰国者・接触者相談センター」などを通じて、感染防止策が整った専門の医療機関(帰国者・接触者外来)で行ってきた。国の「診療・検査医療機関」制度は、県の「発熱外来認定制度」と同様、身近なかかりつけ医などでも新型コロナの検査を可能にすることで、インフルエンザとの同時流行に備えようとするものだ。一方、国制度は指定による補助金の支給(条件付き)があるが、県制度にはない。県の認定を受けて9月2日から新型コロナの検査を始めた橿原市の「安東内科医院」は、国制度の指定も受ける。さまざまな病気を持つ患者を診療するが、一般患者と新型コロナの検査対象者の動線を分けるため、駐車場そばに通常とは別の出入り口を新設、専用の診療スペースも設けた。車で乗り付け、一般患者と会わずに診察を受けられる。発熱の症状だけで新型コロナかインフルかを見分けるのは難しく、新型コロナだった場合、医師の感染リスクもある。同医院では感染防止とスペースの清浄化のため、クリーンパーテーションを2枚置き、その間で診察。鼻から粘液を採取する新型コロナ(抗原検査)とインフルの検査を立て続けに行い、結果は数十分で判明する。患者は車内で待機することも可能だ。安東範明院長によると、これまで発熱患者約20人に新型コロナの検査を実施。陽性者はいないが、熱が高い患者にはインフルの検査もした。安東院長は「同時流行が起きれば発熱患者が急増し、専門機関だけでは新型コロナの検査が滞って行政が混乱する恐れもある」と、制度の必要性を強調する。「風評で一般患者が減る」とためらう診療所もあるが、安東院長は「誰もやらなければ備えられない。対策は十分にしている。通常の患者も安心して受診してほしい」と話す。専用出入り口の工事費や医療器具の購入費は国の交付金で補てんされるという。県の「発熱外来認定医療機関」の認定数は8日現在、124に上る。感染対策が取られていると県が認めた機関で、新型コロナの検査は公費負担。これらの機関は、ほぼ「診療・検査医療機関」の指定も受ける予定。県によると、8日現在、約20の医療機関を指定した。

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