長野のスワニーと伊那食品、手術練習用の血管モデル開発


長野県伊那市の地元企業2社が手術のトレーニングに使う血管モデルを開発した。3Dプリンターで本物に近い質感を出し、天然素材で作った薄いフィルムを巻き付けることで血管表面の薄い被膜も再現した。研修医や専門医の練習用として、医療機関などに販売する。3Dプリンターを使った精密部品設計を手掛けるスワニーと寒天製造大手の伊那食品工業が、地元の伊奈中央病院と連携して開発した。「血管縫合剥離トレーニングキット」は、直径と壁の厚みが異なる血管モデルと伊那食品の可食性フィルムで構成する。キットの価格は税別1万8500円で、丸紅情報システムズが12日から販売する。初年度に5000万円程度の売り上げを見込む。スワニーは3Dプリンターを使って樹脂型を作る「デジタルモールド」という技術を持つ。今回の血管モデルは実際の手術に近いトレーニングを手軽にできるようにしたいという医療現場の要請に対応して開発した。3Dプリンターを使うことで内部を中空にしたり、壁の厚みを柔軟に変えたりすることができるようになっている。自動縫合器にも対応しているほか、力を入れると破れしまうなど本物の血管に近い質感の再現に力を入れた。さらに、伊那食品が天然素材から作ったフィルムを活用。今回のキットに向けて吸水性が高く、生体に近い質感のフィルムを開発したという。少量の水でぬらした血管モデルにフィルムを巻き付けるだけで血管表面にある薄い被膜を再現できる。これにより、縫合だけでなく血管周囲の組織の剥離などの練習も可能にした。伊奈中央病院によると、これまでのトレーニングは豚などの動物を使うことが多く、動物愛護の観点やコスト面などから頻繁に行うことが難しかったという。研修医などにとって血管縫合などの訓練は不可欠で、スワニーの橋爪良博社長は「今後は長さや太さなど様々なニーズに応えていきたい」と話す。スワニーは2019年から3Dプリンターを使った臓器モデルの開発を進めている。伊那食品が提供するゲル素材を使い肝臓モデルなどを製造し、手術や超音波検査の練習用に提供する。電気メスで切開すると実際の手術と同様に煙などが出るモデルも作っている。この臓器モデルと今回の血管モデルを組み合わせることで、実際の手術により近い形でのトレーニングができるようするという構想も描く。

関連記事

ページ上部へ戻る