コロナと闘い地域医療支える 病院再編リスト公開1年


厚生労働省が再編・統合の議論が必要と判断した全国424の病院名を公表してから、26日で1年となる。リストに挙がった岐阜県内9病院の一つ飛騨市民病院(同市神岡町東町)では、病床数の再編を進めながらも、地域の新型コロナウイルス感染症対策で中心的な役割を果たし、存在感を増している。「正しい予防の知識を周知してほしい」―。モニター越しの介護職員から医師へ、現場の切実な願いが寄せられた。今月14日の夕方に同病院の一室で開かれた、飛騨市と高山市の24介護事業所をつないだ月例のテレビ電話会議。同病院で感染症予防の責任者を務める中林玄一医師(46)は院内で実施中の対策を画像で例示し「各施設で感染症に強い仕組みをつくって」と呼び掛けた。テレビ電話会議は、全国での感染拡大を機に始めた。新型コロナ対策で医療と福祉の大規模な連携は全国的にも珍しいという。厚労省は昨年9月、再編と統合の議論の対象となる公立・公的病院として、県内9病院を含むリストを公表した。後期高齢者人口がピークを迎える2025年に適正となるような病床数を都道府県ごとに調整する「地域医療構想」に基づく措置だったが、「地域の実情を無視している」などとして、全国の自治体で混乱と反発が広がった。公表直後には「(飛騨市民病院が)なくなるのか」と不安を語る患者もいたが、市は同病院について他の病院との合併はせず、58床ある病床の内訳を見直し、全体で4床減らすにとどめる方針。公表前から計画していた緩やかなペースでの病床再編で、同院職員は「現在は常に6~7割程度の稼働率がある」と一定規模の病床数を維持する必要性を話した。都竹淳也市長は「新型コロナは、数字だけを見た機械的な議論にブレーキをかけた」と指摘する。新型コロナの感染が爆発的に拡大した欧州では、縮小した医療体制が医療崩壊の危機を招いたとして批判された。都竹市長は「地方の医師・看護師不足は解消しておらず、病院の役割は大きい。今後も地域の実情に合わせた病床数を模索する必要がある」と語った。

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