夏から秋にかけてスズメバチやアシナガバチなどが活動的になり、例年ハチに刺される事故が全国で相次いでいる。和歌山県の田辺市消防本部管内では今年は15日までに6人が救急搬送されており、中にはアレルギーの過剰反応「アナフィラキシー」を発症した人もいた。市消防本部によると、今年は5~7月に月1人ずつ、8月には2人、9月は15日までに1人がハチに刺されて救急搬送された。道路や自宅の庭など屋外だけでなく、建物内に入ってきたスズメバチを追い払おうとして刺された事案もあったという。ほとんどが軽症で、死者はいなかった。アナフィラキシーを発症したケースでは、8月に50代男性が草刈り作業中、スズメバチに刺された。自分で車を運転して病院に向かったところ、目の前が真っ暗になる症状が出て対向車と接触。男性はアナフィラキシーにより血圧が低下するショック状態となり、駆け付けた救急隊がドクターカーを要請。男性は治療を受けて、軽症で済んだという。市消防本部の救急救命士、眞砂天斗さん(28)によると、アナフィラキシーの症状は呼吸の苦しさや皮膚のかゆみ、じんましんのほか、動悸(どうき)や血圧の低下、気分不良、嘔吐(おうと)、めまい、手足のしびれなどさまざま。重症化すると死亡するケースもあり、特に呼吸の苦しさや動悸、血圧低下は心肺停止に至る可能性が高い症状で、注意が必要という。ハチ刺されによるアナフィラキシーは5分以内に発症することが多く、ほとんどの場合は30分以内に症状が出る。眞砂さんは「短時間で発症する危険なアレルギー反応。過去にハチに刺されたことがあり、少しでもアレルギー症状が出たときは、すぐに医療機関を受診するか救急車を呼ぶようにしてほしい」と呼び掛けている。さらに、アレルギー症状により交通事故につながる恐れがあるため「病院に行くときはできるだけ自分で車を運転せず、家族や友人に協力してもらって受診するようにしてほしい」と注意を促している。市消防本部管内では昨年、7月と8月、10月に計9人がスズメバチやアシナガバチなどに刺されて救急搬送された。うち2人がアナフィラキシーと診断された。