医師の偏在、解消に努力 日本専門医機構理事に就任、佐藤慎哉氏に聞く


―新専門医制度が始まり2年余り。機構が抱える課題を教えてほしい。

 「制度は専門医の質を高め、良質な医療を提供していくことを目的に、国が資格取得を求めている。患者にとって医師の治療水準を判断する目安になる。医師の希望研修先が都市部に集中し、そのまま都市部に残るため地域偏在を生んでしまっている。都道府県別・診療科別の採用数上限(シーリング)を設けたが、都市部への集中という課題はいまだ解消されていない。地域と診療科での偏在を、いかに解決していくかが、機構での今後の議論になるだろう」

 ―専門医資格取得に関して本県を取り巻く現状は。

 「県内で専門医研修プログラムの登録病院は山形大が中心だ。20年度は内科で山形大と県立中央、日本海総合の各病院に計42人の受け入れ枠があるが、登録数は17人にとどまる。外科は定員16人に対して登録が2人のみで、定員5人の麻酔科は希望者ゼロという状況だ。本県は計19の基本診療科のうち形成外科、臨床検査を除く17診療科で受け入れが可能だが、全体の定員163人に対して登録数は56人。この数字は機構が課題とする医師の地域偏在を如実に表している」

 ―医療現場ではどのような環境づくりが必要か。

 「本県で研修したいと思ってもらうためには、魅力ある医療体制が重要だ。山形大には重粒子線がん治療やオーダーメード型治療のゲノム(全遺伝情報)医療に加え、内視鏡での耳や肺の手術など、誇るべき先進医療がある。キャリア重視の研修体制を構築していかなければ、本県に医師は残らない。大学病院をはじめ研修先の医療機関は、常に医療体制の向上に向けた努力が必要となる」

 ―受け入れ先の病院以外で、専門医確保を進めるために大切な条件は。

 「専門医が本県に残るかどうかは、現実問題として子どもの教育環境と生活環境が大きく左右する。居住環境によって、医師が二の足を踏む現状がある。そこは、まちづくりの観点で行政が努力しなければならない。医療だけで解決できる問題ではない」

 ―新理事としてどんなことを意識し活動するか。

 「6月の改選で理事に就いた。機構の方針は中央(都市部)での議論に傾きがちだが、地方の実情を伝える立場を担い、新専門医制度の改善に努めていく」

◆新専門医制度 医師は2年間の臨床研修修了後、脳神経外科や内科など19の基本診療科のいずれかを選択し、受け入れ可能な病院で研修プログラムを受講し機構の専門医認定を受ける。資格取得に要する期間は各診療科で異なるが、おおむね3~5年。基本領域の専門医以外では、さらに専門的な分野に分化したサブスペシャルティ領域でも研修制度の整備が進む。
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