岡山大大学院の狩野光伸教授(病理生態学)と田中啓祥助教(同)らの研究グループは、臓器が硬くなって機能を失う「線維化」を膵臓(すいぞう)がん組織で再現することに試験管内実験で成功した。線維化はがんを難治化させる一因とみられており、新たな治療戦略の開発につながる可能性があるという。 線維化は、傷ついた皮膚や臓器の修復過程でコラーゲンなどの線維成分が過剰に蓄積し、その機能自体が失われる状態を指す。線維化による病気では、肝硬変や間質性肺炎が知られている。 狩野教授らは、膵臓がんの組織には線維化が起きやすいとの先行研究に着目し、実験モデルの開発を始めた。生体内の環境により近くなるよう細胞を立体的に培養する「3次元培養技術」を使い、ヒトの膵臓がん細胞と、線維化に関わる線維芽細胞を混ぜ合わせて4~8日間培養。結果、膵臓がん組織が形成され、組織内では線維化が起こっていた。 臨床の現場では、膵臓がん組織に占める線維化の割合は患者によって4~8割と異なっているが、研究グループは自由に割合を変えられる手法を確立。線維芽細胞が異常になって線維化が悪化する仕組みも解析できた。 田中助教は「今回の実験で得られたモデルを使い、線維芽細胞が膵臓がん細胞にどのような影響を生じさせているのかを詳しく調べていきたい」と話している。