[県歯科医師会コラム・歯の長寿学](301)舌は、消化器系の最初の器官である口腔(こうくう)の中でも、極めて重要な器官です。人体の中でも形や位置を迅速、精密に変化させることができる筋肉により構成されます。舌表面には、舌乳頭(ぜつにゅうとう)と呼ばれる粒々があります。口腔がんは、頻度はがん全体の1~3%と高くはありませんが、その多くは舌に発生します。たばこも口腔がんの発生頻度を3倍に上げますが、むし歯や義歯、金属冠等の不良補綴(ほてつ)物が口の中にあって、機械的な刺激が舌に与えられると、がんを発生させやすくなることもわかっています。また、舌のギリギリに見える後縁にタコの吸盤やクレーター状に見える小突起物の有郭(ゆうかく)乳頭や、舌側縁部後縁にひだ状に見える葉状乳頭が、体調により腫れていると、舌がんのように見えたりすることもあります。その経過が長かったり、自然に治癒していたりしていたら、通常はほとんどが悪性ではありません。また、舌には全く異常は認められませんが、ヒリヒリしたり、灼熱(しゃくねつ)感や味覚障害がおこる舌痛症があります。更年期以降の女性に多く認められます。舌の病気の予防としては、喫煙者はたばこを止め、舌に不要な刺激を与えないことです。不安があれば医療機関を受診することです。また口腔内の清掃状態も良好に維持し、定期的に歯科を受診してむし歯や歯周病もしっかりと計画的に管理してください。日々、ご自分でできる、より健康な舌の維持管理の方法としては、適切に歯磨きを行い、最後に、舌の表面につく白い舌苔(ぜったい)をきちんと取ることが大事です。さらに舌ベラを使うとよりいいと思います。これは口臭の予防にもなります。朝の起床時の歯ブラシは、細菌やウイルスを少なくする効果が高いといわれます。風邪やウイルス性疾患の予防にも役立つかもしれません。日頃からご自分の歯の状態、歯肉の状態、舌の状態をよく観察するようにしましょう。(新崎博文 あらさき歯科クリニック=名護市)