離島のコロナ、感染者搬送で海保協力 上天草市・湯島、島外へ迅速・安全に


医療体制が不十分な離島で新型コロナウイルス感染症の患者(感染疑い含む)が発生した場合の対応が課題となる中、上天草市の湯島は熊本海上保安部(宇城市三角町)の巡視艇が救急搬送に協力することになった。迅速で安全に島外へ運べると期待されている。人口約280人の湯島は高齢者が多く、医療機関は市の診療所があるのみ。新型コロナの患者発生に備えて県天草保健所は当初、民間会社が大矢野島間で運航する定期船やチャーター船で、船内隔離した上で島外へ運ぶことを計画。しかし、搬送後の船の消毒作業や風評被害への懸念から市は6月、同保健所の了解を得て同保安部に協力を求めていた。同保安部はこれまでも離島で傷病者が出た際、自治体の要請を受けて出動できる態勢にはあったが、今回さらに「新型コロナは通常の急患搬送とは異なる対策が必要。民間船には難しい条件でも対応できる」として、協力することを決定。市や天草広域連合消防本部、湯島の消防団などと合同で8月6日、巡視艇による搬送訓練を実施した。訓練は、感染疑いのある重篤者が診療所を受診したとの想定。防護服に身を包むなどした巡視艇の乗組員らは、同保健所の指示に従って患者役を10キロ余り離れた天草上島の合津港まで運び、救急隊に引き継ぐ手順を確認した。見守った同保健所の服部希世子所長は「搬送時も適切な感染対策が図られていた」と評価。関係機関は今後、訓練での課題を検証し、より迅速に対応できる連絡体制や要請手続きの構築、運用基準の整理などを急ぐ。今のところ、巡視艇での搬送は重篤な感染疑い患者を想定するが、軽症者も検討する。実際に発生した場合、指定医療機関に近い市外の港に運ぶこともあり得るという。現在まで県内の離島で感染者は確認されていないが、鹿児島県などではクラスター(感染者集団)が発生。それだけに湯島でも危機感は強まっている。島民で、訓練に参加した消防団分団長の姫野優さん(50)は「感染は人ごとじゃない。マスク着用の徹底など、島民への意識をさらに高めたい」と気を引き締めた。市危機管理情報課は「海上保安部の協力は、市民の安心安全の確保につながる」としている。一方、同じく離島を抱える天草市の御所浦一帯は、中央消防署御所浦分署に配備された消防救急艇が出動することになっている。8月上旬までの半年間で、感染疑いのあった4人を搬送したという。(松冨浩之)

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