沖縄の小中学校 情緒学級生、10年で12倍 発達障がいへの理解進む 一時的行動で判断の懸念も


[学びはだれのもの]県内公立小中学校の「自閉症・情緒障がい特別支援学級(以下、情緒学級)」に通う児童生徒が2019年度に3389人となり、10年度の272人から10年間で12・5倍に急増した。全国平均も2・4倍と伸びているが、沖縄が突出している。発達障がいの認知が進んだことが一因だが、虐待やいじめによっても発達障がいと同じような行動特性が現れることがあり、識者からは「支援学級が適切かどうか疑わしいケースがある」と懸念も出ている。(編集委員・鈴木実)知的障がいや肢体不自由などを含む特別支援学級全体でも4・0倍(全国平均1・9倍)で、増加率は全国1位だった。沖縄タイムスが学校基本調査などを基に算出した。情緒学級は、発達障がいの自閉スペクトラム症(ASD)や、心理的な要因で社会生活に適応できない子が対象。県内の支援学級の在籍者のうち、5割強を占める。従来は知的障がい学級の子が圧倒的多数だったが、17年度に逆転した。学級数も、情緒学級は78から596に、支援学級全体では444から1266に増えた。多い学校では10学級以上の支援学級が設置されている。教室が足りず、間仕切りで分割して急場をしのぐ学校もある。全児童生徒のうち情緒学級の在籍者が占める割合をみると、沖縄は10年間で全国46位から10位に急浮上した。近年は毎年約500人ずつ増えており、数年後には在籍率でもトップクラスになる可能性がある。県教育庁は「特別支援教育や発達障がいへの理解が広がり、子どもの特性に合った教育を受けさせたいという保護者が増えた。支援学級の設置基準を16年度から緩和したことも影響している」と分析する。発達障がいは不注意や衝動性、コミュニケーションの難しさなどが特徴とされる。しかし、これらは家庭環境や心理的・身体的ストレスによっても引き起こされることがあり、専門家でも判断が難しいという。特別支援教育が専門で、沖縄の支援事例に多数関わってきた韓昌完(ハン・チャンワン)下関市立大学副学長(元琉球大学教授)は「支援学級の対象とみなされた子の中には、虐待や親の離婚といった家庭環境やいじめなどの問題によって、一時的に発達障がいのように見えているだけと考えられるケースが沖縄では少なくない。表面的な行動特性だけにとらわれず、その子の背景まで見極める必要がある」と指摘する。◇   ◇沖縄の教育の現状や課題をさまざまな観点から掘り下げ、「学びはだれのもの」と題して継続的に報道します。[ことば]特別支援学級 主に軽度の障がいを想定して一般の小中学校に置かれている。「自閉症・情緒障がい」「知的障がい」「言語障がい」「肢体不自由」など種類がある。学級編成の標準は8人。2006年に特殊学級から名称変更された。支援学級に入れるかどうかは、保護者や専門家の意向を踏まえ各教育委員会が判断する。

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