望む最期を共有「人生会議」 コロナ禍で高まる重要性


人生の最期に望む医療やケア、生活する上で大切にしたいことなどについて、前もって家族や医療関係者らと話し合う「人生会議」が、新型コロナウイルス禍でクローズアップされている。人生会議は厚生労働省が2018年から普及に力を入れるが、国内の認知度はいまひとつ。海外では新型コロナの感染爆発で、その重要性が強調されているという。(中島摩子)緊急事態宣言発令後すぐ、人生会議が実践できる「私の生き方連絡ノート」をホームページで無料公開したのは、「自分らしい生き死にを考える会」(東京都)だ。代表で東京女子医科大の内科非常勤講師の渡辺敏恵さん(67)は「大変な時期だけど、人生を見つめ、どう生きたいかを考えるチャンスと捉えませんか?」と呼び掛ける。隔離され、人工呼吸器を付けて会話が難しくなり、短期間で死に至る-といった新型コロナの特性に触れ、「もっと話しておけば、きちんと聞いておけばと、自分も家族も後悔しないよう、元気なうちに考えを表明して」と話す。日本医師会総合政策研究機構の主任研究員、田中美穂さん(47)も「パンデミック(世界的大流行)の今こそ、人生会議をすることが大切」と主張する。田中さんによると、集中治療病床や人工呼吸器の不足に直面した国もあり、英国やスイス、豪州などでは重症化リスクのある人たちに、あらかじめ希望する治療や価値観などを話し合うよう促す動きが広がっているという。人生会議に先駆的に取り組んできた神戸大医学部付属病院緩和支持治療科の木澤義之特命教授(53)は「呼吸器を付けるかどうか、だけの話になるのは乱暴。病気になっても妻とは絶対に離れたくないとか、生きていく上で大事な自分の価値観を基に、話し合いを進めてほしい」としている。【人生会議】 正式には「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」。高齢社会の進展に伴い、本人の意思を尊重した医療やケアのあり方を考える。厚生労働省が公開するパンフレットは「生きる時間が限られているなら、大切なことは?」の問いに始まり、延命治療を重視するか、どこで治療を受けたいか-などを考える。一方、2017年度調査ではACPを「知らない」とする回答が75%に上った。【連載・特集リンク】いのちをめぐる物語

関連記事

ページ上部へ戻る