長崎市の言語聴覚士、西野章子さん(44)が、言語発達や吃音(きつおん)などの障害がある子や不登校の児童生徒の学習を支援する「こども言語相談室コトコト」を同市本原町に開いた。西野さんは「夏休み明けから学校での学習が難しくなり、行事などで人前で話す機会も増える。そうした中で発音の不明瞭さが出てしまい、嫌な思いをする子もいる。気軽に利用してもらいたい」と話す。【川島一起】西野さん自身も小学生の時、先生の話を理解できないことが度々あり、友人に助けてもらった。その時の安心感が心の中にあり、「困っている人たちの支援がしたい」と、言語聴覚士を志した。高校卒業後に専門学校に通い、2001年に言語聴覚士の国家資格を取った。02年に長与町の総合病院に就職し、当初は高齢者を専門に担当していたが、小児分野の言語聴覚士が不足していることを知った。言葉を覚えていない幼い子供にも対応しなければならず難しい役割だったが、「助けを必要としている子供を見過ごせない」と新たな分野に飛び込んだ。病院に小児向けの診察室を開設し、「か行」や「さ行」が言えない子や吃音などを理由に不登校になった子らを支援。20年までに約300人をサポートした。21年に独立し、県内の幼稚園や放課後デイサービスなどに出張して「ことばの教室」を開催。より地域に根付いた活動を目指し、24年4月に「コトコト」を開いた。コトコトでは、言語聴覚士や教員免許を持つスタッフが支援に当たる。対象年齢に制限はなく、医師の診断や処方箋がなくても気軽に相談できる。問い合わせは電子メール(cotocoto.422@gmail.com)へ。言葉によるコミュニケーションに問題がある人を支援する国家資格の専門職。失語症や高次脳機能障害、聴覚障害、言語発達の遅れなど支援対象は多岐にわたり、吃音にも対応する。県内の言語聴覚士は約290人(7月現在)。県言語聴覚士会によると、障害者や高齢者の施設、小児対象の施設で多くのニーズがあるが、なり手が少なく数は足りていない。