1型糖尿病の治療に関する研究を進める摂南大は29日、患者や家族らでつくる認定特定非営利活動法人「日本IDDMネットワーク」(佐賀市)から研究助成金600万円の目録を受け取った。膵臓(すいぞう)の細胞移植治療の安全性を高める感染症検査体制構築に役立てられる。【野口由紀】1型糖尿病は、体の中でインスリンを作ることができなくなる原因不明の自己免疫疾患。子供の発症が多く、インスリンの自己注射が必要となる。根治的治療としては膵臓や、その中にある膵島の移植があるが、提供臓器が不足しており、課題解決のために明治大、福岡大など研究機関が無菌ブタの体内の膵島を移植する「バイオ人工膵島移植プロジェクト」を進めている。同ネットワークは2015年度以降、寄付金を主な財源にした研究基金からこのプロジェクト全体に総額1億9000万円を助成している。摂南大では、20年4月に開設された農学部の井上亮教授のグループが、移植用細胞の安全性を確認する感染症検査体制構築に向けた研究を進めている。ブタから取り出した膵島細胞について、PCR検査(遺伝子検査)やメタゲノム解析などをして、ヒトとブタに共通する感染症の有無を調べ、実用化に向けた体制構築を目指している。29日に枚方市のキャンパスであった目録贈呈式で、同ネットワークの井上龍夫理事長は「医療は効果的であると同時に安全でなくてはいけないので、安全性が担保できるよう研究に期待している」と述べた。井上教授は「実用化には検査の高度化と迅速化が必要であるため、そこに研究費を活用していきたい」と語った。