暑さが本格化する夏場に向けて、消防や労働基準監督署は熱中症の予防を呼び掛けている。高温・多湿の環境でマスクを着用していると体に負担が掛かるため、国も「熱中症のリスクを高める恐れがある」として注意を促している。大阪管区気象台によると、近畿地方の6月の平均気温(速報値)は1946年の統計開始以降、歴代1位の暑さで、平年より1・6度高かった。近畿地方11地点の中でも和歌山など5地点が歴代1位となり、気象台の担当者は「熱中症に注意してほしい」と呼び掛けている。熱中症は、高温・多湿の環境下で体の水分や塩分のバランスが崩れて、体温の調節機能が働かなくなって起こる。体温が上昇し、めまいや手足のしびれ、頭痛、嘔吐(おうと)などの症状があり、重症化すると意識障害やけいれんが起き、死亡することもある。消防庁によると、全国では調査を始めた6月1日以降、28日までに5892人(速報値)が熱中症で救急搬送された。和歌山県内は53人だった。マスクの着用など「新しい生活様式」における熱中症予防に向けて、環境省や厚生労働省は「屋外で人と十分な距離(2メートル以上)を確保できる場合はマスクを外す」「マスクをしているときは負荷のかかる作業や運動を避ける」「周囲の人との距離を十分に取った上で、適宜マスクを外して休憩する」などのポイントをまとめている。田辺市消防本部管内では6月1日以降、8人が熱中症の疑いにより救急搬送された。昨年は、夏場(5~9月)に67人。草刈り中に意識を失いドクターヘリで搬送されたケースや、1人暮らしの高齢者が自宅でエアコンを使わずに大量の汗をかき、意識がない状態で見つかった事例もあったという。月別では7月に20人、8月に30人と、2カ月で全体の7割以上を占めた。また、年齢別では65歳以上の高齢者が39人で全体の約6割あり、ほとんどが自宅で発生していた。市消防本部の救急救命士、三栖文彦さん(43)は「のどが渇く前にこまめに水分を補給するよう心掛けてほしい。病院を受診する目安は、口から水分を摂取できないときや、症状が改善しない場合。ただ、意識の消失やけいれんの症状があれば、すぐに救急車を呼んでほしい。お年寄りや子どもは熱中症になりやすいため十分注意し、周囲の人も見守ってもらえたら」と話している。救急車を呼ぶか判断に迷う場合は、医療従事者に緊急性を相談できる無料電話窓口「♯7119(田辺市救急安心センター)」の活用も呼び掛けている。◇田辺労働基準監督署は、夏場に作業する労働者の安全を確保するため、管内の商工会や農協、建設業労働災害防止協会などに熱中症の予防を文書で要請した。同署によると、管内では昨年、熱中症による休業4日以上の労働災害が1件発生。不休を含む労災請求は27件あった。「こまめな水分補給、休憩が必要」と注意を促しているほか、休息中も徐々に進行して重症化するケースも多いとして、早期の医療機関の受診も呼び掛けている。