一般的なハイビジョンテレビ(2K)の解像度の約16倍の画素数で、視力4.3に相当する高精細「8K」カメラを搭載した内視鏡の軽量化が進んでいる。普及すれば、胎児を母親の体内にいるまま手術するなど高度な医療が身近な選択肢になることが期待される。
機器の重さは、医師の負担に直結する。近く一般的な内視鏡(2K)と同じレベルまで軽量化される見通しだ。
母体内の羊水は透明度が低く、胎児が見えにくい。胎児の腫瘍などを内視鏡で取り除く手術は、医師の経験や勘が重要となるため難易度も高く、8Kカメラで内部が見やすくなれば、手術が容易になる。
加えて、切除する部分と神経や血管など残すべき組織の識別もしやすくなるため、正常な組織をより完全な形で残せ、術後の影響も小さくなる。
初期段階から開発に携わっている、医工両分野の研究者らが参加する一般社団法人「メディカル・イノベーション・コンソーシアム」の理事長、千葉敏雄順天堂大学特任教授(胎児・小児外科)は「胎児手術のような難しい手術に使える内視鏡は、生まれた後のあらゆる世代の人に対しても非常に使いやすい」と話す。
千葉氏らのグループが開発した8K内視鏡は、2014年に杏林大学病院で行われた森俊幸教授による成人への手術で初めて使われ、その後もカメラ部分を中心に軽量化が図られてきた。当時の重さは2キロ以上。現在は約370グラムにまで抑えられ、近く一般的な2Kの内視鏡と同じ200グラム程度まで軽量化される見通しという。 (C)時事通信社