大阪にコロナ専門病院、「第2波」の砦に…地元に戸惑いの声も


大阪市の市立十三(じゅうそう)市民病院(大阪市淀川区)が、22日にも新型コロナウイルス患者の専門病院として稼働する。感染者数が再び増加に転じる「第2波」が起きた場合の砦(とりで)となるが、医療従事者のサポートや風評被害の防止が課題となる。「新型コロナの患者と、その他の患者が同じ病院にいるのは非常にリスクがある。公的な病院として我々が行う使命がある」。16日、病院内で取材に応じた西口幸雄病院長は、こう述べた。大阪府内の新型コロナの入院患者は16日現在、317人(うち重症39人)。減少傾向にあるが、府は16日から事業者への休業要請を段階的に解除しており、専門家は再び増加に転じる可能性を指摘する。府は入院患者用に約1100床を確保しているが、重症患者用は約190床にとどまる。十三市民病院は元々、17診療科、病床数263床の総合病院。府と市は、感染者の急増時に病床が足りなくなる「医療崩壊」を防ぐため、酸素吸入などが必要な中等症患者を専門に受け入れる病院への衣替えを決めた。松井一郎市長は「患者を中等症のうちに治療し、重症化させない役割がある」と説明。「ワクチンや治療薬が開発されるまでは専門病院が必要だ」とする。大規模病院を新型コロナ患者を受け入れる拠点病院とする動きは神奈川県や兵庫県などであるが、病院を丸ごと専門病院とする例は珍しい。府はほかに、民間の阪和第二病院(大阪市住吉区)を、重症化しやすい高齢の軽症患者向けの専門病院とする方針だ。十三市民病院では専門病院化の方針が示された4月中旬以降、入院中だった約150人の転院などの対応に追われた。年約600件の出産を取り扱う周産期医療の拠点病院でもあるが、11月までに出産予定だった妊婦約280人は、近隣の病院を紹介するなどした。院内には、危険区域と安全区域に分ける「ゾーニング」のため、防護服の着脱場所や病室を区切る壁を新たに設置。飛沫(ひまつ)を拭き取りやすいよう、病室の床はカーペット敷きから、抗菌のビニール製シートに張り替えた。新型コロナの入院患者は1室あたり1~2人とし、23床でスタート。最終的に90床まで増やす。十三市民病院には感染症の専門医がいないため、大阪市立大が専門医を派遣。医師や看護師向けに感染症対策の研修も実施する。突然の専門病院化に、戸惑いの声も上がる。病院には、医療従事者や職員から「タクシーに乗車拒否された」「保育施設に子どもを預かってもらえない」などの相談が寄せられており、産業医がカウンセリングを行っている。専門病院の方針決定後、医師2人と、看護師や職員が数人ずつ、退職したという。同病院の医療従事者は、読売新聞の取材に「専門外の仕事を急にしなければならず、精神的に疲弊している。家族も風評被害に遭うのではと不安に思う人が多く、いつまで専門病院を続けるのか、出口が見えないのが一番つらい」と話す。西口病院長は「病院に勤める者は自分の使命として新型コロナの患者と向き合っており、偏見なく接してほしい」と話している。

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