インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)の約半分を切除する手術をしても、手術の方式(術式)によって糖尿病になるリスクが約4分の1に下がる可能性があることが九州大学や山口大学などの研究でわかった。糖尿病の予防や治療に役立つ可能性のある成果という。糖尿病は膵臓の細胞からのインスリン分泌不足などが原因で起き、疑いがある人も含めると国内に約2千万人いるとされる。良性の腫瘍(しゅよう)などで、膵臓を部分的に切除した人は最大で約4割が糖尿病になるなど、リスクが高まることが知られているが、膵臓のどこを切るかや、術式で違いがあるかは十分にわかっていなかった。九州大学の小川佳宏教授(内分泌代謝学)らは、細長い膵臓のうち、十二指腸に接する約半分(膵頭部)を十二指腸とともに切る手術と、反対側の約半分(膵体尾部)を切る手術の二つの術式に着目。2014~17年に手術を受けた計48人の、最長約5年間の糖尿病発症率を比較した。その結果、全体では38%(18人)が糖尿病になった。このうち膵体尾部を切った28人では16人(57%)が発症したが、膵頭部を切った20人では2人(10%)にとどまった。膵体尾部切除ではインスリンの分泌量が減ったが、膵頭部切除では手術前より増えていた。十二指腸の切除も伴うため食物の流れが変わり、インスリンの分泌を促す物質が出やすくなっている可能性があるという。術前より糖尿病の疑いを示す数値が改善した人もいた。小川教授は「膵臓を半分切除する手術を受けても、切除部分や術式によって糖尿病のリスクがこれほど異なることに驚いた。手術後の糖尿病の予測や治療に生かせれば」と話している。論文は2月24日、米国糖尿病学会の専門誌(オンライン版)に掲載された。(竹野内崇宏)