宣言後、心筋梗塞受診までの時間1.7倍に 合併症も増 国循


国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)の研究チームは10日、新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出された2020年4月7日以降、急性心筋梗塞(こうそく)を発症した患者の受診までの時間が約1・7倍に延びた、と発表した。心臓破裂などの合併症を患う割合も約4倍に増加しており、受診の遅れが影響した可能性があるとしている。研究成果は、英医学誌「オープン・ハート」の電子版に掲載された。チームは、18年1月1日~20年8月14日に同センターに入院した心筋梗塞の患者のうち、発症後24時間以内であればカテーテル治療が有効とされた422人のデータを解析。宣言前(20年4月6日まで)の359人と、宣言後(同7日以降)の63人を比較した。発症からセンター到着までの時間(中央値)は、宣言前が2・4時間だったが、宣言後は4・1時間と約1・7倍になった。来院が発症後24時間以降と遅れた割合は、宣言前は14・2%(51人)だったが、宣言後は25・4%(16人)に増加。その結果、カテーテル治療を行った割合は、宣言前の82・5%(296人)から宣言後は68・3%(43人)に下がった。治療が遅れた場合、心筋への血流が不足し、心筋細胞の壊死(えし)が進むため、合併症を患う可能性が高まる。宣言前は心臓が破裂したり穴が開いたりする重症合併症の割合は3・6%(13人)だったが、宣言後は14・3%(9人)と約4倍に増えた。入院中に死亡する割合は、どちらも約6%で変わらなかった。コロナの感染状況と受診までの時間との因果関係は不明だが、野口暉夫(てるお)副院長は「急に胸の圧迫感を覚えて、しばらく続く場合は、心筋梗塞の前兆の可能性がある。コロナの感染が拡大していても、ためらわずに受診してほしい」と話している。【近藤諭】

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