大分県津久見市の離島保戸島(ほとじま)で、島の診療所と津久見中央病院=津久見市千怒=を、光回線で結ぶオンライン診療(遠隔診療)の運用が1日から始まった。9月30日に島民向けのシステム見学会が開かれ、参加した6人が診療所のパソコンの画面越しに医師とやりとりして、システムの使い方を学んだ。市によると県内では初の試み。同島は津久見港から約14キロ沖の豊後水道に浮かぶ周囲約4キロの離島で、371世帯649人(2020年9月4日現在)が暮らす。うち65歳以上が73・5%(同3月現在)。医師は常駐しておらず、保戸島診療所院長の大村一郎医師(73)が、月、火、木、金の週4日、フェリーで通っている。市は17年度から19年度にかけて、市内全域に光ブロードバンドを整備した。今後、新型コロナウイルス感染が広がり医師が島に行けなかったり、悪天候でフェリーの運休が続いたりした場合に備え、新たな地域医療の形としてオンライン診療の必要性があるとして導入した。課題は診療所に医師または薬剤師がいないと、薬剤師法の規定で薬をすぐに患者へ渡せない点。その場合、医師の診療日に診療所または中央病院で処方された薬を渡す▽午前中に遠隔診療をして、その日午後の船に薬を乗せて配送する▽荒天が予測される場合には前もって数日分の薬を渡す、といった対応策が考えられている。見学会に参加した高瀬清彦代表区長(67)は「島には消防団や区長らでつくる『おたすけ会』があり、年に約30人の急患を島外に運ぶ。海が荒れると船の欠航が多く、画面でつながることは安心です」。大村医師は、「音声が途切れたり、はっきりしなかったりした部分があった。画像は顔に関しては問題ないが、肌の色などは画面越しで分かりにくい。照明を工夫するなど、しばらくは試行錯誤です」と述べた。市健康推進課の川野明寿課長は、「オンライン診療の導入で、いつでも保戸島の医療が確保できる。悪天候でフェリーが出ないことが年に数回あるが、オンラインでカバーできる。薬の問題を解決するために、今後も厚生労働省や県などに粘り強く、折衝していきたい」と話した。(佐藤幸徳)