大阪大と国立循環器病研究センターは18日、過去に在籍した男性医師が執筆した計5本の論文について、研究データの捏造(ねつぞう)や改竄(かいざん)があったと発表した。うち阪大在籍時に発表された1本は、肺がん治療の臨床研究の参考論文として用いられており、同大は「研究に対する信頼を損なった」と謝罪。現時点で臨床研究に参加した患者への健康被害はないとしている。両機関によると、男性医師が責任著者として関わった臨床系の2本と基礎系の3本の論文について、実際とは異なる数値データが用いられるなどの不正が見つかった。このうち、臨床研究の参考となった肺がん手術の際の合併症に対する薬剤投与の効果を検証する論文は、術後の炎症などを計ったデータが、実際のカルテの数値ではなく効果があると見せかける数値に改竄されていたという。男性医師は平成13~14年と21~26年に阪大に医員として、22~30年に同センターに室長として在籍した。29年12月に両機関に通報があり不正が発覚。男性医師は捏造や改竄を否定しているが、両機関は「疑いを覆す客観的証拠が示されず、証言の信用性が認められない」として不正を認定、論文の取り下げを求める。