新型コロナウイルスの感染拡大に備えて、府内の医療従事者を対象にした体外式膜型人工肺(ECMO=エクモ)の講習会が9日、京都市上京区の府立医科大で開かれた。エクモは重症患者の弱った肺を休ませて回復につなげるため、新型コロナ対策で「最後の砦(とりで)」とも期待されるが、肺炎治療目的で使用経験のある医療従事者は少ない。府内9カ所の医療機関から医師や看護師ら40人が参加し、有事を念頭に使用上の注意点などを学んだ。【千葉紀和】エクモは血管から抜いた静脈血に体外の人工肺で酸素を加え、再び体内に戻す。濃度の高い酸素を患者の体内に送って肺の働きを補助する人工呼吸器と異なり、肺の機能を代替できるのが特徴だ。使用法には、主に心不全に使う場合と呼吸不全に用いる場合の2方式がある。コロナの肺炎対策には後者が必要となるが、この方式の使用経験者は少なく、装置があっても人材不足で動かせないことが課題となっている。3連休の中日に開かれた講習会には、府立医科大付属病院、京都第一・第二赤十字病院、宇治徳洲会病院、福知山市民病院など9施設から計10チームが参加。エクモの臨床経験が豊富な医師らによる組織「エクモネット」の講師から、血液を取り出したチューブ内で血栓ができるのを避ける方法や、トラブルでエクモが機能停止した場合の手動での動かし方などを、実技を交えて指導を受けた。同ネットでデータ管理の代表者を務める府立医科大付属病院の橋本悟・集中治療部長によると、国内にエクモの装置は2200台以上ある。コロナ対策の重症患者に対するエクモの使用は府内では1例だが、全国では約200例あり、約7割が一定の回復をみせているという。橋本部長は「エクモの使用には24時間監視が必要で人手がかかり、医療機関の負担は大きい」と課題を挙げた上で「コロナの感染拡大でエクモの必要性が高まる恐れがあり、講習で全体的なレベルアップにつなげてほしい」と語った。