球磨(くま)川の氾濫で地域医療の一翼を担う医療機関も甚大な被害を受けた。熊本県人吉市上青井町の総合病院「医療法人蘇春堂(そしゅんどう)球磨病院」。県南部で晴れ間がのぞいた8日、職員や医師らは院内の泥をかき出す作業に追われた。気温の上昇とともに熱中症の懸念も広がり、インフラがままならない中、医療態勢の立て直しを急ぐ。熊本県によると、7日現在、浸水が相次ぎ県内27の医療機関が被害を受けたことが明らかになっている。球磨川支流沿いに建つ同病院は、球磨川の氾濫時、職員や入院患者らは3階以上に避難し、全員無事だったが、院内は泥にまみれた。1階の放射線機器やCTスキャナーなどの医療機器は全て水没。貯水槽のポンプも壊れ、一時は水を供給できない状態に。通院・入院する透析患者約30人は、県内の他の病院に転院する措置を取らざるを得なくなった。5日に給水車が到着し、水の供給こそできるようになったが、ポンプが壊れた影響で院内の空調設備は使用できないままという。病院関係者は「雨がいったん上がり、徐々に気温が高くなった。入院患者らの熱中症も気がかりだ」と打ち明ける。同病院の上西大蔵事務長(64)は「空調の修復が完了するまで窓を開けたり、水分をこまめにとるよう促したりし、熱中症にも細心の注意を払わないといけない」とうなだれた。(藤木祥平)