保健師の比率高い都道府県「コロナかかる率低い」 奈良県立医大


人口あたりの保健師数が多い都道府県ほど新型コロナウイルスの罹患(りかん)率がおおよそ低くなる傾向がある――。奈良県立医大(奈良県橿原市)の研究グループが、こんな分析結果を発表した。グループは「保健師を増やすことは、日本での感染拡大を封じ込めるのに役立つ可能性を示唆した」と指摘している。県立医大県民健康増進支援センターの冨岡公子特任准教授らのグループが10日に発表した。研究には都道府県ごとの人口10万人あたりの保健師数と、2021年9月末までの新型コロナの罹患率(人口10万人あたりの累積感染者数の割合)のデータなどを使った。保健師数が多い順に47都道府県を五つのグループに分け、それぞれの罹患率との関連を調査。新型コロナの感染拡大に関連があるとされる人口密度などの影響に結果が左右されないよう分析した。その結果、保健師数が多い都道府県のグループは、少ないグループに比べて罹患率が低くなる傾向が判明したという。個別の都道府県ごとにみると、こうした傾向とはややずれている県もあるが、10万人あたりの保健師数が最も多い島根県(79・3人)は罹患率が全国で2番目に低く、保健師数が最も少ない神奈川県(23・5人)の罹患率は全国で4番目に高かった。保健師数が11番目に少ない奈良県(41・0人)の罹患率は11番目に高かった。研究グループは結果について、二つの可能性を指摘。一つは保健所に勤務する保健師の積極的疫学調査がクラスター(感染者集団)の早期発見・対応を可能にし、感染拡大防止に寄与したとしている。もう一つは、市町村勤務も含めた保健師の活動が活発な地域では健康に関心を持つ人が増加。健康情報を得る機会も多いことから感染を防ぐ行動を実践するようになり、感染拡大を防いだと推察した。冨岡特任准教授は「新型コロナをはじめとした新興感染症などの感染拡大を防ぐために、保健師が貴重なマンパワーとなっていることが結果として表れている」と話した。【久保聡】

関連記事

ページ上部へ戻る