HIVの保健所検査、休止続出=コロナ懸念、業務逼迫理由に―外部委託活用求める


新型コロナウイルス感染者への対応で業務が逼迫(ひっぱく)する保健所では、無料・匿名でできるHIV検査を休止するケースが相次いでいる。厚生労働省によると、昨年の保健所検査の件数は半減しており、コロナ下でも検査を続ける保健所に希望者が殺到。専門家からは治療の遅れや感染拡大を懸念する声が出ており、同省は外部委託などによる代替手段確保を求めている。
 埼玉県内では、17カ所の保健所のうち8カ所で3月のHIV検査を中止。草加市の保健所では昨年9月から実施しておらず、検査所はコロナ関係で使う用具などの置き場となっている。担当者は「検査に来た人のコロナ感染を防ぐため中止した。今後の再開は検討中」と話す。
 川越市では検査人数を30人から半分に絞るなどして、月3回ほど実施している。近くの保健所で受けられずに県外から訪れる人もいるが、希望者が多くすぐに検査できないこともあるという。
 名古屋医療センター(名古屋市)エイズ総合診療部長の横幕能行医師によると、保健所の検査中止などの影響で、同センターでは新型コロナの流行後、新規に治療を始める人が1割ほど減少。新型コロナの疑いで受診した高熱の患者のHIV感染や、肺炎で入院した患者のエイズ発症が判明した例もあった。
 HIVに効く治療薬は開発されており、現在では早期に治療すれば日常生活を送ることができる。横幕医師は「検査機会が減ることによる感染拡大や治療の遅れが懸念される。この状態は看過できない」と話す。
 こうした状況を受け厚労省は、外部委託の積極的活用や、受け付けのオンライン化を促す通知を全国の保健所に出した。 (C)時事通信社

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